ikemenserieslのブログ

イケメンシリーズ ストーリーのネタバレです

王宮【アラン】honey ending後半

舞踏会を抜け出し、アランが私の身体を横抱きにして部屋まで送ってくれていた。

 

「あ、アラン……もういいよ、大丈夫」

 

アラン「暴れんなよ」


足は多少痛むものの、昨夜ほど腫れてはいない。

アランは息をつき、私の身体を抱え直した。

 

「……っ」


私はアランの首元にしがみつきながら、ぎゅっと目を閉じた。

 

(歩けないわけじゃないのに……恥ずかしい)

 

 

部屋に入ると、アランが私をベッドに座らせて屈みこんだ。


アラン「……こんな高い靴履いてっからだろ」

 

「うん……」


アランが、私の左足から靴を脱がせてくれる。


「……っ」


(なんか……ドキドキする)


アラン「…………」


私の反応に気づいたアランが、ふっと笑みを浮かべ、足首に唇を寄せた。

私は慌てて、手を伸ばしアランの肩を押す。


「や、やだ……アラン」


アラン「なんで」


顔を上げ、アランが軽く首を傾げた。


(なんでって……)

 

アランの視線に、私の頬が赤く染まっていく。

鼓動が、痛いくらいに跳ねていた。


アラン「……お前、その顔で言っても無駄だからな」


「……え?」


アランの手が、私の右足からも靴を抜く。

その仕草に、足先がびくりと震えた。


アラン「誘ってるようにしか見えねえもん」

 

「そ、そんなこと…っ…」


再び足に唇が触れ、私は睫毛を揺らす。

 

アラン「…………」


そうして顔を上げたアランがやがて、私を覆うようにベッドに手をつき…。

 

「あ、アラン……ちょっと待って」


私はベッドに肘をつき見上げながら、アランを片手で制した。

 

アラン「…………」


アランは私の片手を取ると、耳元に音をたてるようにしてキスをする。

 

「…っ……」


(こ、このままじゃ……)

 

私は慌てて、取られた片手に力を込めた。


「だ、だめ……ドレスが」


アラン「……ドレス?」


目を瞬かせ、アランが顔を上げる。


アラン「ドレスが、なに?」


アランを見つめ、私はためらいがちに口を開いた。

 

「……脱がないと、しわになっちゃうから」


(明日、ジルに怒られちゃう……)

 

アラン「ふーん……」


呟いたアランが、私の背中へと手を伸ばす。


「あ……」


アランの指先がドレスの紐を解き始めたことに気づき、私はさらに赤くなってしまった顔をうつむけた。

そのうちに、アランが低く呟く。


アラン「……これ、どうなってるんだよ」

 

苦戦した様子で、アランが眉を寄せている。


「…………」


その様子を眺めながら、私はふっと笑みを浮かべた。

 

(なんか、苦戦してるアランって可愛いな)

 

アラン「…………」


すると、指先の動きを止めたアランが私の顔を覗き込む。

 

「……んっ…」


そのまますくい上げるようにキスされ、私は驚きに目を瞬かせた。


「え、アラン?」


アラン「やめた。このままでいいだろ」


アランが再び、ベッドを軋ませていく。


(そ、そんな……)

 

そうしてその指先が、ドレスの下に差し入れられた。

 

「……ぁっ」

 

思わず声を上げると、アランが面白そうに言う。


アラン「こんな格好、珍しいしな」


そうしてそのまま、アランが指先を滑らせる。

 

「……ん…っ…」

 

腰元が疼くような感覚に目眩を覚えながら、私は甘い吐息を漏らし、アランの指先に翻弄されていった…。

 

 

..........

 

 

そして、翌朝…―。


アランが眠っている間に、私は脱いだドレスをクローゼットにしまっていた。


(しわにならなくて、良かった……)


振り返ると、アランの寝顔が見える。


(……寝顔は、可愛いんだけどな)


ベッドに腰掛け、アランの額にかかった前髪を払う。


「…………」


(なんだか結局いつも、アランに振り回されちゃう。昨夜だって……)

 

昨夜のことを思い出し、私は顔を赤らめて指先を震わせた。

 

(いつかは私も、アランのことをびっくりさせたいけど……)

 

考えていると、突然に声が響いてくる。

 

アラン「人の寝顔見るなんて、趣味悪いんじゃねえの?」

 

「……!」

 

驚き見下ろすと、アランが目を覚ましていた。

 

アラン「…………」


「お、おはようアラン……」


(起きてたんだ……)

 

目をこすりながら起き上がり、アランがじっと私を見つめる。


アラン「…………」


その様子に、私は軽く首を傾げた。

 

「……アラン?」


(もしかしてアラン……寝ぼけてる?)

 

やがてアランが、ぽつりと呟く。

 

アラン「腹減ったな」


「え……」

 

(でも……)

 

アランの言葉に、私は窓の外を見やる。


早朝の空はまだ、朝陽も登り切ってはいなかった。


「まだ朝早いから、誰も準備してないと思うけど……」


アラン「…………」


するとアランが起き上がり、ベッドから降りていく。

 

アラン「行くぞ」

 

「え、アラン…?」

 

私は慌てて後を追い、ベッドを降りていった。

 


(アラン、どこへ行くんだろう……?)

 

 

...........

 

騎士宿舎にあるキッチンを使い、アランが手際よくご飯を用意してくれた。

 

(す、すごい……)

 

私は目の前に置かれたご飯を見下ろし、呟くように言う。


「いただきます」

 

アラン「……どうぞ」


スプーンですくい口に入れると、あまりの美味しさに思わず目を瞬かせてしまった。


「おいしい……!」


アラン「……良かったな」


アランが言い、少しだけ口元をほころばせる。

 

(まさかアランが、こんなに料理上手だとは思わなかったな……)


やっと登った朝陽が、キッチンに差し込む。


(今日は、宣言式なんだ……)


短い沈黙の後、アランがご飯を口に運びながら呟いた。


アラン「……もうすぐ式だな」


「……うん」

 

(アランも今、同じことを思っていたんだ…)


私はアランを見上げ、そっと尋ねる。

 

「……緊張してる?」

 

するとアランが黙ったまま、私を見上げた。


アラン「…………」


やがて、ぽつりと言う。

 

アラン「……そうだな」

 

「…………」


(アランでも、緊張するんだ…)

 

緊張しているというアランの姿は、いつもの堂々としたアランからは想像が出来なかった。


アラン「これから王として覚悟を決めなきゃならねえと思うと、ぞっとするけどな……」


ふっと笑みを浮かべ、アランが再びスプーンを持ち上げる。

 

アラン「俺は、俺に出来ることをするだけだ」


「……うん」

 

そうして再び訪れた沈黙の中で、私は向かいに腰掛けるアランを見上げる。


(アランが戦うなら、私はずっと側で守っていこう……)

 

やがて目を上げたアランと視線が合うと、私は小さく息を呑んだ。

 

(この穏やかな時間が、続くように……)

 


..........

 

そうして、『宣言式』が始まり…―。


「…………」

 

プリンセスの正装に身を包み、私は謁見の間を進んでいく。

 

「…………」


集まった多くの人々の中には、見知った顔もあった。


(ルイ様、ロベールさん、レオ、ジル……。これまで、たくさんの人に支えられてきたんだな…)

 

私は顔を上げ、一度大きく瞬きをする。

そして…―。

 

王座の前では、アランが私を待っていた。

 

アラン「…………」


私は短い階段をゆっくりと登り、全体を見渡す。

やがてアランが黙ったまま目の前に現れ、片膝をついた。


「…………」


(これが私の、プリンセスとしての役目……)


私はアランを見下ろし、声が響くように大きく息を吸い込んだ。

 

「アラン=クロフォード」

 

アランを呼ぶ私の声が、静寂の中に響いていく。

 

「ウィスタリア王国プリンセス、アンの名において……次期国王であることを、宣言致します」

 

そうして私は、アランの頭に静かに王冠を乗せた。


アラン「…………」


アランの視線が上がり、私を捉える。

 

(アラン……)

 

次の瞬間、ファンファーレと共に大きな歓声があがった。


「……!」


私は驚き、思わず視線を向ける。

 

(すごい……)

 

騎士たちが声を上げ、喜んでいる姿が見えた。


アラン「…………」


立ち上がったアランもその様子に、口元に笑みを浮かべている。

 

「…………」


(でもまだ、美香として言っていないことがある…)

 

私はそっと、アランを呼んだ。


「アラン……」


アラン「……?」


小さく手招くと、アランが私を見下ろす。

その時、私はアランに向けて大きな声で言った。

 

「アラン、大好き」

 

アラン「…………」


上がる歓声の中、私の声はアランにだけしっかりと届いていく。

面食らったように目を瞬かせたアランが、やがて笑い出した。

 

アラン「バーカ」

 

そうしてゆっくりと、顔を寄せていき…


「……っ…」


溢れる歓声の中で、私はアランと誓いのキスを交わした…。