イケメン戦国【佐助】
美香「わぁ、変わってないね……!」 「ああ、懐かしいな」 美香と佐助が安土を訪れたその日、空は見事な快晴だった。 (美香さん、ご機嫌だな。長旅をしてきた甲斐があった) 久しぶりにそぞろ歩きする城下町は、以前以上に賑わっていて、暴動の爪痕はいまやな…
春日山城の朝は早い––– 謙信「そこの忍び、今日こそはお前を斬る」 佐助「待ってください、謙信様」 (佐助くん、危ない!) 刀と刀が打ち合わされる音を目覚ましに、住人たいが起き出してくる。 信玄「ん、今日も始まったか」 幸村「またやってるのかよ……」 …
(ん……明るい……) 力なくまぶたを開けると、部屋の中には柔らかな日差しが差し込んでいた。 (身体に、まだ熱が残ってる……) 目を瞬かせながら布団の中で脚をきゅっとすり合わせると…… 佐助「美香さん、起きた? おはよう」 「おはよ……佐助くん」 先に起き出…
幸村「ったく……再会の挨拶にしては物騒すぎんだろ」 佐助「幸村……!?」 佐助の振り下ろした刀を軽々受け止め、幸村は頷いた。 幸村「相手の顔くらい確かめろよ、らしくねえ。どうやら一足遅かったみてえだな……」 佐助「どうして幸村が……」 交わる刃越しに、…
美香が元就の手に落ちた、翌日––– 堺の港付近の茂みに、身を潜める蘭丸の姿があった。 高い木の上から、蘭丸は堺の港のとある船を、ひたすら見張り続けていた。 傷は癒える気配がなく、疲労が彼の柔らかな頬を尖らせ、目ばかりが爛々と光っている。 蘭丸「あ…
佐助「……これはこれで、かなり困る」 「どうして……?」 身体を起こしかけて、いきなり視界が反転する。 (わっ?) 柔らかい草むらに押し倒されたと気づいた時には、覆いかぶさる佐助くんが私を真っすぐ見下ろしていた。 佐助「これでも必死に歯止めをかけて…
謙信「気が変わった。契約など知るか。お前は俺が磨き上げた名刀……手放すくらいなら、この手で叩き斬って終わりにしてやる」 佐助「え……?」 信玄「謙信、お前、何を言って……」 謙信「佐助、覚悟!」 佐助「!!」 即座に謙信様が刀を抜き放った。 (謙信様…
激しい顕如との一戦が終結した翌日––– 早朝に起きだし、顔を洗って身支度を整えていると、離れた場所に佐助くんの姿が見えた。 遠くからシルエットを目にしただけで心が躍る。 (ちょっと緊張するけど……) 想いを交わした昨夜の記憶が、私を佐助くんの元へ小…
現代に帰還してから三ヶ月後––– 佐助「では教授、今までお世話になりました」 教授「君のような優秀な学生が自主退学とは残念だ。いつでも戻っておいで、三雲くん」 佐助「……はい」 挨拶をして教授と別れたあと、佐助の口からぽつりと呟きが漏れた。 佐助「…
翌朝––– (ん……) 重いまぶたをゆっくり持ち上げる。 (あれ……ここどこ?) 見慣れない天井をしばらく眺めた後…… (そうだ、私、佐助くんと……) 現代に戻ってきて、このホテルの部屋で一夜を過ごしたことを思い出す。 (あんな風に触れられると思ってなかっ…
「あなたが……蘭丸くんの話していた、すべての黒幕……!?」 元就「蘭丸の奴、バラしてやがったか。まあ、話が早くて助かる」 手袋をはめた手で襟首を掴まれたかと思うと、乱暴に立たされる。 元就「お前に文なんざ送った猿飛佐助を恨むんだな。俺は、お前の男…
「ぁっ……」 佐助「その声、もっと聞きたい」 唇が首筋を伝い降り、胸元にキスが落とされ、身体の奥が一層熱くなった。 (こんな甘ったるい声……自分が自分じゃないみたいだ。もっと触れてほしい。もっと佐助くんの体温を覚えていたい) どうしようもなく甘く…
蘭丸「そうだね……。ここまで悩みに悩んできたから、もう少しだけ、悩んでみるよ。……生き延びられたらの話だけど」 「どういう意味……?」 蘭丸くんの瞳に力強さが滲んで、凛とした声が響いた。 蘭丸「俺には、どうしても倒さなきゃならない相手がいるんだ。日…
佐助「……幸村」 幸村「…………」 静寂に満ちた野原で、幸村は自分の腕を枕にし、大の字になって寝ていた。 佐助も隣に腰を下ろし、同じように寝転がる。 佐助「この満天の星も見納めだな……」 幸村「……惜しいのは、星だけかよ」 身体を起こした幸村が佐助をきつ…
顕如との一戦が終結した翌日––– 国境で上杉武田軍と織田軍の会合が、改めて開かれた。 両軍の武将や家臣たちとともに、仲介役を果たした私も呼ばれ、佐助くんと隅に控える。 信長・秀吉「…………」 信玄・謙信「…………」 (昨日よりましだけど、やっぱり空気が凍…
その日の日暮れ、国境の平原は、戦地と化した。 迫りくる黒装束の一団の数は、優に千を超えている。 援軍の到着を待たず、国を背負う将たちは刀を抜いた。 信長「–––貴様ら、抜かるなよ」 秀吉・光秀「はっ」 信玄「悲願の大戦を汚した罪、償ってもらおうか…
タイムスリップから二ヶ月と二週間––– 国境の開けた平野の真ん中で、両軍の和平交渉が開かれることになった。 信長・秀吉「…………」 謙信・信玄「…………」 (空気が凍りそう……!) 目の前では安土の武将たちと春日山の武将たちが、鋭い眼差しで相対している。 ど…
佐助「……」 (っ……私の気持ちは変わらない) 言葉を交わさないまま、ふんっとお互いに顔を背け合う。 幸村「おいおい、お前らな……」 困り顔の幸村を残し、佐助くんは頑として黙ったまま去っていった。 (こんなにも分かり合えないのは、初めてだ。誰より一番…
「少し休んで。今お茶を淹れるから……」 支度しようとした私に、佐助くんが首を振る。 佐助「ありがとう。でも、時間がない。すぐに謙信様たちのもとへ報告に行かないとならない」 「え……」 佐助くんの緊迫した眼差しに、返す言葉がかすれる。 佐助「偵察の結…
謙信様から木刀を向けられて以来、これまでと一転して声をかけられることが多くなった。 謙信「美香、こちらへ来い。俺の姫鶴一文字を見せてやろう」 (え、今日も?) その日も宴が始まってすぐに、上座の謙信様から名前を呼ばれる。 「昨日も一昨日もその…
「蘭丸くんだよね!? どうして逃げるの……っ」 蘭丸くんがゆっくりと私へ振り返り…… 蘭丸「……馬鹿だなあ、美香様。どうして罠だと思わなかったの?」 「え……?」 温度を感じさせない蘭丸くんの瞳が私を捉える。 蘭丸「敵地へ逃げた君の前に、織田軍に属する…
佐助「当分、君のツッコミが聞けないのは俺も寂しい。というか……ツッコミだけじゃないな」 「え?」 少し戸惑ったように佐助くんが目を伏せた。 佐助「どうやら俺は、君がいないと寂しいみたいだ」 「ええっ?」 くらっとして、目の前で星が砕け散ったかと思…
「大事な人たちに、二度と会えなくなるのに……悲しくないの?」 気持ちをぶつけると、佐助くんがかすかに眉をひそめた。 佐助「どうして……か。自己分析してみるから、少し待って。とりあえず歩こう。血流をよくすれば脳も活性化され、考えがまとまるはずだか…
佐助「心臓が、鳴ってる」 「え……?」 (佐助くんも、私と一緒……?) 佐助「君に初めて出会った時も、こうだった。何かが胸の辺りでスパークしたんだ」 「スパークって……。雷がかすったんじゃ……?」 自分の胸に手を当て、佐助くんは記憶をたどるように呟く。…
三成「こんなことを言ってはいけませんが……どうしても私は、佐助殿を憎いと思えません」 秀吉「俺もだ、三成。美香が裏切ってなかったって話も本当だろう」 蘭丸「……俺もそう思うよ」 美香との日々が偽りのものではなかったと知り、安堵した空気がかすかに流…
光秀「巣穴にもくりこんだ蛇の一匹、放っておきましょう。それよりも、急を要する用向きが」 政宗がギラリと目を光らせ低い声で笑う。 政宗「それは、刀を存分に振るえる用向きなんだろうな?」 光秀「ああ、龍虎退治だ。–––だろう、秀吉?」 秀吉さんは浅く…
「佐助くんの目で見る世界はきっと、いつでもどこでもピッカピカに輝いてるんだろうね」 佐助「…………」 わずかに息を呑んだ後、佐助くんは外した眼鏡を手に、目をこすりだす。 「どうかした……?」 佐助「……最近、目が若干おかしいんだ。昼間だけの現象かと思…
「本当にごめん。私、佐助くんに助けられてばっかりだね……」 申し訳ない気持ちでいっぱいになって、声を絞り出す。 すると、佐助くんは苦しげな眼差しを私に向けた。 佐助「もう、それ以上謝らないでほしい。……俺も、美香さんに謝らないとならないことがある…
佐助くんが織田軍の敵方に仕える人だという確信が深まる中––– 私は佐助くんが武将公認で安土城を訪ねてきても、仕事が忙しいことを理由に、一緒に過ごさなくなった。 (私を助けるために佐助くんが危険な橋を渡ったりしないよう、早く自立しないと) そんな…
敦盛LIVE翌日––– なぜか私は呼び出しを受けて、光秀さんの御殿に来ていた。 部屋でひとり待たされる間も、そわそわして落ち着かない。 (何の用事だろう? あの人だけは、まだ少し苦手なんだよな……) いつも薄く微笑んでいる光秀さんは、何を考えているか読…