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イケメンシリーズ ストーリーのネタバレです

戦国【佐助】情熱13話前半

「あなたが……蘭丸くんの話していた、すべての黒幕……!?」

 

元就「蘭丸の奴、バラしてやがったか。まあ、話が早くて助かる」

 

手袋をはめた手で襟首を掴まれたかと思うと、乱暴に立たされる。

 

元就「お前に文なんざ送った猿飛佐助を恨むんだな。俺は、お前の男に用があんだよ。佐助をおびき出す手伝いをしてもらうぜ」

 

「佐助くんを……!? 何のために……!?」

 

元就「憎悪と力と血が支配する、素晴らしい世界の実現のために」

 

唇に狂気の笑みを滲ませた彼は、強い力で私を部屋から引きずり出した。

 

(佐助くん……!)

 

…………

 

 

堺から戻ってきた佐助は、意気揚々と宿の部屋に飛び込んだ。

 

佐助「美香さん、遅くなった! ……美香さん?」

 

満面の笑みで迎えてくれるはずのこはるの姿は、どこにも見当たらない。

 

宿の店主「やっと来たかい! 大変だよ、あの娘さん……!」

 

佐助「え……」

 

駆け寄ってきた宿の店主は青ざめた顔で、謎の男がこはるを力ずくでさらっていったのだと話す。

 

宿の店主「すまない、助けようとしたが、とても敵わなかった……」

 

店主の顔や腕にあるケガの痕は、まだ新しく痛々しい。

 

佐助「…………」

 

宿の店主「男は元就と名乗って、あんたに『本能寺にて待つ』と伝えろと言っていたよ。派手な格好をしていて、ずいぶんガラが悪かったが……」

 

佐助「……そうですか、分かりました」

 

宿の店主「あんた、落ち着いてるが、心配じゃないのかね? あの娘さんはあんたの恋人じゃ……!」

 

佐助「落ち着いているように見えてるなら、よかった。……忍びとして、存分に戦える」

 

宿の店主「なんだって……?」

 

佐助は眼鏡をはずしてレンズを拭く。

 

佐助「……こんなに誰かに怒りを覚えたのは、初めてだ」

 

宿の店主はハッと息を呑んだ。

 

動じていないように見えた佐助の瞳が、冷ややかに、苛烈に、燃えている。

 

眼鏡をかけ直した佐助は深く頭を下げた。

 

佐助「ご迷惑をおかけしました。ケガ、どうかお大事に」

 

そう呟いた次の瞬間–––

 

宿の店主「!?」

 

佐助の姿は風のようにかき消え、宿代らしき金の粒が店主の手中に残されていた。

ワームホール出現まで、あと半日。

 

 

…………

 

(夕日が燃えてる……)

私の不安な胸のうちを映しているかのように、建物から見える空は焼けただれていた。

 

連れてこられた本能寺は、修復されてはいるものの、あちらこちらに焼け焦げた跡が残っている。

 

元就「…………」

 

私と距離を取り、あぐらをかいて座っている元就さんの方をそっと見る。

刀を抱くように腕を組み、ずっと押し黙っている。

 

(この人が何を企んでるのか分からないけど、ここから逃げないと……! でも、どうやって……?)

 

さっきから同じことばかりを、ぐるぐると考え続けている。

景色を染める闇が濃くなっていくと同時に、焦りもふくらんでいく。

 

(どうしよう。もうじきワームホールが出現する時間だ……)

 

元就さんとは圧倒的な力の差があるのは分かっている。

相手は日ノ本全土を焦土と化そうとしている、とんでもない人だ。

 

(縛られてないのに、怖くて身動きができない。この人……何を考えてるの?)

 

–––そこまで考えて、不意に、佐助くんの顔が脳裏をよぎった。

 

(……本当に、分からないのかな)

 

 

 

ーーーーーーーー

 

佐助「織田信長にも、現代人と同じ人間らしい一面もあるんじゃないかな」

 

「信長様に……?」

 

佐助「武将だって、人間だもの」

 

ーーーーーーーー

 

 

「っ……あの……!」

 

元就「あぁ?」

 

ギロリと睨まれ縮み上がりそうになりながら、自分を必死に励ます。

 

(状況を打開する手がかりを掴むためにも、元就さんがどんな人か、理解しないと……!)

 

対話の糸口を探し、おそるおそる視線を返した。

 

「あなたはどうして、この国を地獄に変えたいと思うんですか……?」

 

元就「……はっ。『変える』わけじゃねえ。本来のあるべき姿に還るだけだ。この世は元より地獄、それが真の有り様だ」

 

冷たい笑みには、人をゾッとさせる残忍さが漂っている。けれど……

 

(残忍なだけじゃ、ない気がする。たんだろう……)

 

「……私にとってこの世界は、地獄じゃないです」

 

元就「は?」

 

「辛いことも悲しいこともあるけど、同じくらい、楽しいことや嬉しいこと、美しいことに溢れてる」

 

元就さんは私をじろじろと遠慮なく眺める。

 

元就「反論するのか? 面白え」

 

「あなたの考えを否定するわけじゃなくて、あくまで私の意見です。ある人と出会って私はこう思うようになりました。何が起きようと私は、生きてるだけで幸せだって」

 

元就「生きてるだけで……?」

 

虚を突かれたように目を見開いたあと、元就さんが吹き出した。

 

元就「……くくっ、おめでたい奴だな、お前」

 

(あ、笑った……)

 

ギラギラした笑いではなく、ほんの少しだけ楽しそうな、心からの笑みに視線を奪われる。

 

(佐助くんの言う通りだ。やっぱり、この人も……)

 

「『人間だもの』……」

 

元就「あ?」

 

話をしているうちに、彼の身体中に残る生々しい傷が気になってくる。

 

(私を無理やり連れ去って、たくさんの人をひどい目に遭わせた大悪人、倒すべき敵……。そんな風にしか思えなくて意識してなかったけど……痛くないわけがない)

 

「……余計なお世話かもしれないですけど、怪我の手当てをしたらどうですか?」

 

元就「……おいおいおい、お前、自分の立場わかってんのか?」

 

「わかってます。ただ……とても痛そうなので。私だったら、痛くて辛いので」

 

元就「…………」

 

(佐助くんを罠にはめようとしてるこの人の手当てをしようと思えるほど、私は聖人じゃないけど……)

 

立ち上がって元就さんのそばへ歩み寄る。

 

元就「……っ」

 

ほんの一瞬、びくっと元就さんが身を縮めた。

 

「せめて、これを使ってください」

 

取り出した手ぬぐいを元就さんの手に載せようとすると……

 

元就「触んじゃねえ!」

 

(わっ)

 

勢いよく振り払われて、手ぬぐいがはらりと床に落ちた。

 

「……? 私は武器も何も持ってませんよ?」

 

元就「んなこた分かってる。大人しく座ってろ……!」

 

元就さんの額には、わずかに汗が浮いて、睨まれているのに、恐怖は湧いてこない。むしろ–––

 

(この人が……怯えてる? もしかして……人に触れられるのが、怖いの? そういえば、佐助くんに元就さんがどんな人か聞いた時……)

 

 

ーーーーーーーー

 

佐助「壮絶な人生を送った武器だ。過去に、海軍を率いて顕如さんと手を組み、信長様を討とうとして敗北してる。子どもの頃に親や兄を亡くしたり、家臣の裏切りにあったり、過酷な経験を重ねたのちに…血で血を洗う政権争いを制し、主家すらも倒して中国地方を制覇した、凄まじい人だ」

 

ーーーーーーーー

 

(あの時はただ怖い人だと思った。でも……『この世は地獄』–––そう思うようになるまでに、一体どんな人生をたどってきたんだろう)

 

恐怖が消えたわけじゃない。それでも、同じだけの悲しみが胸に広がっていく。

 

(この人の言ってることには共感できないし、考えてることの全部は分からない。でも、現代にも乱世にも、痛みを知らない人なんていない……)

 

手ぬぐいを拾い上げ、元就さんの取りやすいところへ、たたんでそっと置く。

 

「……あなたは、寂しい人ですね」

 

元就「っ…………。お前、何を……?」

 

高笑いでも脅しでもない、素の声が元就さんから漏れた時……

 

佐助の声「美香さん!」

 

(この声……っ)

 

「佐助くん!?」

 

元就「!!」

 

よく響く声に、手すりに駆け寄って下を覗くと……

 

 

佐助「彼女を返してもらいます、元就さん! –––はっ」

 

(消えた!?)

 

次の瞬間、佐助くんは手すりの向こうの屋根の上に飛び乗っていた。

 

(すごい、一瞬であんなところへ……!)

 

元就「……待ちくたびれたぜ佐助ェ! 美香、くだらねえおしゃべりは終わりだ」

 

「きゃ!?」

 

手荒く襟首を掴まれ、元就さんは私を連れて手すりの向こう側へと躍り出る。

 

屋根の上へと引きずり出されたかと思うと、喉元に刃物を押し当てられた。

 

(……っ!)

 

青白く光る冷たい刃に、呼吸を忘れそうになる。

 

佐助「…………」

 

元就「はっ、動じねえか。自分の女が首かっ切られそうになってるってのによ。放してくれって懇願しねえのか?」

 

佐助「言っても無駄でしょうから、しません。実力行使で、彼女を取り戻します」

 

(佐助くん……)

 

元就「さすが、俺の船をド派手にブチ壊しただけのことはある。だが、簡単にはいかねえぜ? お前ほどの忍びが、相手の力をはかれねえ訳がねえよな?」

 

佐助「…………」

 

ふたりは睨み合ったまま、互いに一歩も動かない。

 

(佐助くんの目を見たらわかる。いつもの余裕がない。この人は、とんでもなく強い武士なんだ……)

 

眼鏡の奥の佐助くんの瞳には、驚くほど鋭い感情が滲んでいた。

 

「佐助くん、無茶はしないで……!」

 

佐助「泣きそうな顔をした君を取り戻すためなら、少しくらいの無茶は無茶じゃない」

 

「……うん!」

 

元就「信じ合う姿か。泣かせるねえ。あんまりくだらねえから、笑えて笑えて涙が出るぜ」

 

元就さんが佐助くんを見据え、喉を震わせて笑う。

 

佐助「元就さん。美香さんを連れ去った責任は取ってもらいます」

 

元就「そんな怖い顔しなくても返してやる。ただし……船の爆破に使った『ばくだん』とかいう武器を俺に寄越せ。あんなド派手な計画を成功させた男だ。もしもの時のために予備くらい残してあんだろ?」

 

佐助「…………っ」

 

元就「そうすりゃこの女ともども、五百年先の世だろうがあの世だろうが、好きなところへ行かせてやるよ!」

 

佐助「あの浜辺に……あなたも泳ぎついていたんですね。忍び同士の会話を盗み聞きするなんて……あなたは、とんでもない人だ」

 

刀に手をかけながら、佐助くんは警戒を強める。

 

元就「くくっ、地の底這いずり回って生きてきた人間をなめてもらっちゃ困るぜ?」

 

佐助「俺の爆弾を、失った武器の代わりにするつもりですか?」

 

元就「なかなか頭が回るじゃねえか、猿飛佐助」

 

ふたりの会話を聞きながら、状況を把握するために頭をフル回転させる。

 

(ええっと、つまり……佐助くんたちは爆弾を作って、元就さんの船を積んでた武器ごと爆破したけど、元就さんは船を脱出したあと佐助くんと蘭丸くんの会話を盗み聞きして、私たちの素性を知った……。佐助くんから手に入れた爆弾で、暴動を激化させるのがこの人の狙いなのか……!)

 

執拗に日ノ本を焦土化しようとしている元就さんの執念に、背筋が寒くなる。

 

元就「とっとと渡せ。何、わがままは言わねえよ、ひとつでいい。そいつを調べりゃ製法はわかるんでな。だが、渡さねえっつうんなら……」

 

「あっ……」

 

押し付けられた刃の冷たさが、私の喉を震わせる。

 

元就「この女、お前の目の前で殺すぞ」

 

佐助「…………っ」

 

佐助くんの全身から怒りが沸きたち、ゆらめきだっている。

 

元就「十数える間待ってやる。–––腹くくれ、佐助」

 

(元就さんは本気だ……! 本気で心底、この世界を憎んでる……)

 

死への恐怖を超えるほどの、未来を失う恐怖が襲いかかってくる。

 

「佐助くん、絶対に渡さないで! 日本を滅ぼすなんて恐ろしいことを許しちゃ駄目……!」

 

佐助「っ美香さん……」

 

元就「ひとつ、ふたつ、みっつ……」

 

その時–––

 

(雷!? まさか……!)

 

佐助くんが私と視線を合わせ、両目を瞬かせた。

 

(あれは……ウィンク。佐助くんの、アイコンタクトだ!)

 

元就「いつつ、むっつ、ななつ……」

 

突然の悪天候に動じもせずカウントダウンが続けられる中、私は佐助くんだけを真っ直ぐに見つめる。

 

佐助「向かったさん。俺を、信じて」

 

元就「ここのつ……!」

 

佐助くんは懐から掴み出した爆弾らしきものを、元就さんの方へ差し出した。

 

元就「……はっ、わかりゃいいんだよ」

 

私の首筋に突きつけていた刀を下ろし、元就さんは爆弾へと手を伸ばす。

 

–––直後、佐助くんは爆弾の導火線に点火した。

 

元就「!?」

 

(今だ……!)

 

渾身の力で元就さんの腕を振りほどき、佐助くん目指し、瓦を蹴ってダッシュする。

 

佐助「美香さん!」

 

「佐助くん……!」

 

大粒の雨が降り始め、何度も滑りそうになりながら、佐助くんへ手を伸ばす。

 

佐助「くっ……」

 

佐助くんは私を抱き止めると、瞬時に屋根を駆け上がった。

 

佐助「あそこだ!」

 

稲光とともに現れた頭上のモヤの中へ、ふたりで飛び込む。

 

元就「佐助、美香……!」

 

(元就さん……)

 

導火線が残り数ミリになった爆弾を手に、元就さんは大声で笑い出した。

 

元就「くくく、面白え……面白えよ、お前ら……! 祭りの最後にどんでん返しとはなあ! だがよ、これで終わりと思うなよ!?」

 

狂気をはらんだ絶叫をさえぎるように、佐助くんが私を腕の中へ抱き込んだ。

 

佐助「目をつむって!」

 

「うん……っ」

 

ドオオオン–––ッ!

 

(–––……っ!)

 

響く雷鳴、とどろく爆発音、押し迫る熱風、明滅する火の粉と稲光。

 

そして、猛り狂うように続く高笑い……

 

(何もかもが遠ざかっていく……)

 

それでもその中でただひとつ……

佐助くんの温もりだけが、確かに私を包み込んでくれていた。



稲光とともに、轟音が世界を揺るがしたところまでは覚えている。

けれどすぐに視界がぐにゃりと歪んで–––

…………

 

???「……さん! 美香さん!」

 

(っ、ん……)

 

まぶたを開くと、大好きな人の心配顔が目の前いっぱいに広がった。

 

気づけば、佐助くんの腕の中に抱きかかえられている。

辺りを見回すと、そこはひと気のないアスファルトの路地で……

そびえたつビルや空をさえぎる電線が目に飛び込んできた。

 

(この景色は……もしかして……?)

 

「佐助、くん……、私たち……」

 

佐助「……ああ。お帰り、美香さん」

 

「……っ、うん、佐助くんも、お帰り……!」

 

(現代に、帰ってきたんだ……!)

 

打ちつける雨と強い風の中、身体はすっかり冷えきっている。

座り込んだまま、夢中で佐助くんと抱きしめ合った。

 

 

…………


「よかったね、泊めてもらえて……」

 

佐助「本当に。時代劇の撮影中にゲリラ豪雨に見舞われて避難してきたって言い訳は、かなり厳しいものがあった」

 

私たちが嵐を逃れてやってきたのは、本能寺跡地近くのホテルだ。

異様な装いの上にずぶ濡れだったけれど、どうにか部屋に通してもらえた。

 

(ひとえに全部、佐助くんの用意のお陰だ)

 

「佐助くん、よくクレジットカードなんて持ち歩いてたね……」

 

佐助「現代に戻ったら必ず必要になると思って、常に忍ばせてた。磁気が狂ってなくて助かった」

 

「さすがどんな時も用意周到な忍者……!」

 

佐助「抜かりはない。とはいえ、この時代に忍者の心得は必要ないな」

 

(そうか、ここは乱世じゃない。平和な現代なんだ……)

 

そう思っても、心がついていかない。

ついさっきまで、刀の切っ先を突きつけられていた。

あの冷たい感触がまだ首に残っている。

 

「なんだか夢でも見てる気分……」

 

濡れそぼった着物と、居心地よく整えられたホテルの風景に、スイッチひとつで明るくなるライト……

すべてがちぐはぐで、頭がまだぼんやりしている。

 

佐助「夢じゃないって、わからせてあげる。来て」

 

「え……」

 

 

…………


(あ……っ)

 

バスルームに連れ込まれたかと思うと、きつく抱きしめられた。

佐助くんが後手に蛇口をひねり、熱いシャワーが、濡れて冷えきった私たちの身体に降り注ぐ。

 

「っ、佐助くん……?」

 

佐助「風邪を引かないように、急いで君の身体を温めないとならない。でも、俺は今すぐ君を抱きしめたい。だから、こうするしかない」

 

耳元で囁かれて、一気に身体が火照りきる。

 

佐助「……君が、無事でよかった……っ」

 

視線をあげると、あんなに強くて、いつも冷静な佐助くんが、今にも泣き出しそうな顔をしている。

 

佐助「堺から戻って、君がさらわれたと知った時、心臓が止まるかと思った。……怖い思いをさせて、ごめん」

 

肌を伝い落ちるお湯と一緒に、佐助くんの言葉が染み込む。

身体だけじゃなく、胸の中まで熱で満ちていく。

 

(ああ、私たち、生きてる……)

 

現代に戻ってきたことより、それが何より大事に思えた。

 

「怖くなかったって言ったら嘘だけど、それでも信じてた。佐助くんが宿を出る時、一緒に現代に帰ろうって約束してくれたから」

 

佐助「……っ。……俺に顔をよく見せて」

 

「うん……」

 

間近で視線を絡め、ぽたぽたと佐助くんから落ちてくる雫を頬や唇で受け止める。

 

佐助「……足りない。もっと近くで、ちゃんと君が見たい。君の全部を感じたい」

 

熱いシャワーを身に浴びながら、お互いを抱き寄せあって、唇を重ねた。

 

淡いキスは、だんだん激しく、深くなっていく。

 

(忍者で……強くて、無表情で、優しくて……こんな人、世界にたったひとりだけだ。私、こんなにも佐助くんが……)

 

「大好き……」

 

佐助「…………。困ったな。今夜はどんなに泣かれても君をめいっぱい愛したい。三度目の寸止めはありえないから覚悟して」

 

白く煙る湯気の中、佐助くんの瞳から冷静さが消え、熱っぽい眼差しが私へ注がれる。

 

(覚悟ならとっくにできてる……)

 

佐助くんとキスを繰り返しながら、隙間なく肌を重ね……

 

やがて–––私たちは、ふたりでひとつになった。