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イケメンシリーズ ストーリーのネタバレです

戦国【佐助】情熱12話前半

 

蘭丸「そうだね……。ここまで悩みに悩んできたから、もう少しだけ、悩んでみるよ。……生き延びられたらの話だけど」

 

「どういう意味……?」

 

蘭丸くんの瞳に力強さが滲んで、凛とした声が響いた。

 

蘭丸「俺には、どうしても倒さなきゃならない相手がいるんだ。日ノ本全土を焦土にする陰謀は、まだ終わってない」

 

(え……!?)

 

佐助くんと思わず顔を見合わせ、すぐに視線を蘭丸くんへ戻す。

 

「終わってないって、どうして? 顕如さんはもう織田軍に……」

 

蘭丸「顕如様じゃない。この暴動の真の黒幕は毛利家当主–––毛利元就だ」

 

佐助「毛利、元就……?」

 

佐助くんが切れ長の目をわずかに見開き、息を呑む。

 

(有名な名前だ。確か、中国地方の戦国武将だっけ) 

 

「佐助くん、毛利元就ってどんな人なの?」

 

佐助「壮絶な人生を送った武将だ。過去に、海軍を率いて顕如さんと手を組み、信長様を討とうとして敗北してる。子どもの頃に親や兄を亡くしたり、家臣の裏切りにあったり、過酷な経験を重ねたのちに…血で血を洗う政権争いを制し、主家すらも倒して中国地方を制覇した、凄まじい人だ。とうに歴史の表舞台からは姿を消してるはずだけど、まさか生きてたとは……」

 

(血で血を洗う……。そんな怖い人が、真の黒幕……)

 

ぞっとして背筋が寒くなる。

 

蘭丸「詳しいんだね、佐助殿。あいつは、自分は死んだことにして異国を渡り歩いてたらしいよ。顕如様が信長様を倒そうとしていることを嗅ぎつけて、手を結ぼうと近づいてきた」

 

佐助「彼も、信長様に復讐を?」

 

蘭丸「表向きはね。でも、あいつの真の思惑は読めなかった。顕如様は、相手が腹に一物ある人間だと承知で、その目論見に乗ったんだ。……それくらい、信長様への恨みが深かったから」

 

蘭丸くんは悔しそうに、握りしめた拳を震わせた。

 

佐助「もしかして、高価な種子島を異国から持ち込んだのは……」

 

蘭丸「そう、元就だよ。山ほどの武器を各地の民や武士に流して回ってた。俺を手伝いをさせられそうになったけど……それだけはできなかった。罪のない人たちを巻き込むなんて、ありえないでしょ。あいつと縁を切ろうって、顕如様を何度も説得した。だけど……」

 

佐助「–––復讐にのめりこんだ顕如さんの耳には届かなかった、か」

 

(最初から蘭丸くんは、この事態を止めようとしてたんだ……)

 

蘭丸「顕如様を盲信する同胞たちは、元就にいいように操られて武器をあちこちにバラまいた。っ……どうにかして、俺が止めるべきだったのに」

 

「自分を責めないで……。蘭丸くんはもう十分苦しんだでしょう?」

 

蘭丸くんは切ない眼差しで首を横に振った。

 

蘭丸「俺には責任があるんだよ、美香様。……そばにいたのに、暴動の火種がまかれるのを止められなかった。最初から元就を、顕如様に近づけちゃいけなかったんだ」

 

後悔を滲ませて吐き捨てられた言葉は、どれも痛々しい。

 

(どうして蘭丸くんが、これほどの苦しみを抱えないといけないの……)

 

毛利元就という人は、蘭丸くんの健気な思いを知りながら利用したのだ。

 

彼の思惑は、濃い闇に包まれているかのように少しも見えない。

 

毛利元就はそれだけの武器があるのに、どうして直接信長様と戦わず民や武士に流したりしたんだろう」

 

蘭丸「あいつは、各地で暴動が起きれば織田軍と上杉武田軍が講話か一時休戦に出ると読んでた」

 

佐助「そうか……。最初から、会合のために安土を出てくる信長様を狙ってたのか」

 

蘭丸「うん。仕留めるつもりだったけど、失敗に終わった。元就の暗躍は止まってない。信長様を倒すことが元就の最終目的じゃないって、ようやく気づいたんだ」

 

蘭丸くんは両軍の会合の行方だけではなく、元就の動向も密かに追っていたのだと話す。

 

蘭丸「元就は暴動激化の総仕上げに、大量の武器を南蛮の船で運び入れようとしてるって情報を掴んだ。あいつの本当の目的は、信長様を倒すことじゃなくて……日ノ本全土を、秩序も何もない地獄にすることなんだ」

 

「えっ……!」

 

佐助「暴動そのものが目的……。最悪の予想が当たってしまった」

 

「おかしいよ、その人……。そんなことをして何になるの?」

 

蘭丸「分からない、俺にも全然理解できない。でも……っ、あいつの企みを止めないといけないってことだけはわかる。顕如様も信長様も何かを守るために戦ってる。あの人たちが守ろうとしてるこの国を、滅ぼさせない。刺し違えてでも、必ず」

 

(蘭丸くんが……こんな顔をするなんて)

 

安土のナンバーワンアイドルの面影は今やない。

強く光る瞳には、揺るがない覚悟だけがあった。

 

佐助「分かった。そういうことなら、俺も蘭丸くんを手伝おう」

 

蘭丸「え……っ」

 

「佐助くん……」

 

声をあげた私に、佐助くんが素早く耳打ちする。

 

佐助「このまま元就さんの暴走を許せば、未来まで大きく変わってしまう。俺たちの帰る場所さえ、なくなるかもしれない」

 

(でも……)

 

「これほどの緊急事態なら、春日山や安土の武将たちに知らせて、一緒に戦った方がいいんじゃ…」

 

私の提案に、佐助くんは即座に首を横に振った。

 

佐助「国を治める信長様や謙信様は、権力を行使して、民を平定するのが先決だ。そうでなければ、元就さんを止めても暴動は終わらない」

 

佐助くんが取り出したクナイに視線を落とす。

 

佐助「歴史の裏側で暗躍する者の企みを葬るのは、同じく歴史の影の存在である忍びの務め。美香さん、分かってほしい。忍び猿飛佐助、最後の仕事だ。俺たち自身のためにも、この時代で出会った大事な人たちのためにも、勝ちは譲れない」

 

佐助くんの瞳には、確かな決意が宿っている。 

 

「……決めたんだね?」

 

佐助「ああ。俺はもう、歴史の観察者じゃない。激動の乱世の中で運命にあらがう、当事者だ」

 

(運命に、あらがう……)

 

前に佐助くんは、運命なら甘んじて受け入れると言った。

私にはそれが、ひどくもどかしかった。ふたりの運命が未来ですれ違うことが、怖かった。

 

けれど今–––私たちの心はひとつだ。

 

(一緒に行きたいけど、足手まといになるのは確実だ)

 

深く吸った息を吐いて、こみあげる不安をぐっと抑えこむ。

 

「分かった。佐助くんが運命に打ち勝つのを信じて待ってる」

 

佐助「ありがとう」

 

話を聞いていた蘭丸くんは、見極めるように大きな瞳を向ける。

 

蘭丸「佐助殿、本当に一緒に来るつもり? 役に立たないなら連れて行ってあげないよ」

 

佐助「大丈夫。無償の無期限保証書と粗品をつけてもいいくらい、役に立つ自信がある」

 

白物家電じゃないんだから……! そもそも蘭丸くんには通じないよ」

 

蘭丸「うん、さっぱり意味わかんない。だから……佐助殿の腕、試させてもらうね?」

 

蘭丸くんの声が低くなって、その手が刀の柄に伸びた。

 

佐助「かの森蘭丸と手合わせできるなんて、光栄だ」

 

蘭丸「あっそう? じゃ、手加減なんていらないね。こはる様、怪我をしないように下がってて」

 

冴えきった蘭丸くんの瞳が、獲物を狩るように鋭く細められ–––

 

「あ……っ!」

 

次の瞬間、蘭丸くんの刀と佐助くんのクナイがぶつかり、火花が散った。

 

(っ……すごい殺気……!)

 

次々と打ちこまれる攻撃を、佐助くんは焦らずにさばき続ける。

本気でないと分かっていても、一撃ごとに心拍数は上がっていく。

 

佐助「豪胆な真っ向勝負を仕掛けてくるとは意外だな。知略で乗り切るタイプかと思った」

 

蘭丸「見かけで判断しちゃダメダメだよ? 佐助殿もそこそこやるじゃん! でも、ちょっぴり脇が甘いんじゃない?」

 

鮮やかに白刃がきらめく中、何かが地面に叩きつけられる。

 

佐助「!?」

 

瞬時に広がった煙幕が、視界を遮った。

 

(煙玉……! 忍者の標準装備なんだ)

 

驚きながら煙の中を注視しても、蘭丸くんの姿どころか、気配さえない。

 

佐助「いい密度の煙だ。この完成度、成分と配合が気になるところだな」

 

蘭丸「佐助殿、おしゃべりしてていいの?」

 

不意にクナイが木の上から投げられ、佐助くんの胸へと突き刺さる。 

 

「佐助くんっ!」

 

駆け寄ろうとして私を、佐助くんの声が制した。

 

佐助「大丈夫、よく見て」

 

(え?)

 

煙が消え、佐助くんのいた場所に、クナイの刺さった丸太が現れる。

 

(いつの間に……! しかも丸太に眼鏡まで描いてある)

 

蘭丸「へえ、ずいぶんと余裕じゃん」

 

蘭丸くんの声が、頭上から降ってくる。

見上げると、木の上で脚をプラプラさせて笑う蘭丸くんの姿があった。

 

(こっちもいつの間に……!)

 

蘭丸「さすが、上杉謙信の懐刀。勘がいい上に、一筋縄じゃないかないね」

 

佐助「その言葉、家宝にする」

 

佐助くんは丸太から抜いたクナイを、木の上めがけて投げ返す。

 

蘭丸「わっ、わわわっ……!」

 

足元を掠めたクナイに蘭丸くんがバランスを崩して後ろへ傾いた。

 

「危ない、蘭丸くん……!」

 

蘭丸「なーんてね?」

 

くるりと回転して着地した蘭丸くんが、抜いた刀を佐助くんへ振り下ろす。

 

すぐさま佐助くんは地面に手をつき、後方へバック転をしながら切っ先を蹴り返した。 

 

蘭丸「やってくれるね! 褒めてあげる。佐助殿がここまで強いなんて嬉しい誤算だな」

 

佐助「君こそ……計算以上の俊敏さだ」

 

(蘭丸くん、こんなに強かったんだ……!)

 

距離を取った蘭丸くんと佐助くんは、かすかに息を乱しながら武器をおろした。

 

佐助「蘭丸くん、そろそろ俺の腕試しの結果を教えて欲しい」

 

蘭丸「ちょっぴり癪だけど……文句ナシに合格だよ。–––佐助殿、お願い。俺と一緒に戦ってくれる?」

 

佐助「喜んで」

 

(よかった……!)

 

佐助「森蘭丸が優秀な忍びだったなんて、歴史学者全員の顎が外れる驚愕の事実だな」

 

「うん。蘭丸くん、すごく強いんだね」

 

蘭丸「顕如様に仕込まれたからね。信長様の懐深くまで潜り込んで、寝首をかくために。……望みは叶えてあげられなかったけど」

 

呟く蘭丸くんの眼差しは少し哀しげだった。

 

(これだけの実力があるのに、本能寺で蘭丸くんは信長様を襲うことなく姿を消した。今までずっと、顕如さんと信長様の間で、苦しんできたんだろうな……)

 

佐助「蘭丸くん。俺は君が刀を持たずに済む日が来るのを、願ってやまない」

 

蘭丸「……佐助殿も美香様と一緒で優しいね。俺が刀を手放すかどうか決めるのは、元就を倒してからだよ」

 

佐助「……そうだな」

 

蘭丸「ふたりとも、これを見て」

 

蘭丸くんが私たちの前に、取り出した地図を広げる。

 

蘭丸「俺が掴んだ情報によると、元就の船が着くのはここ、堺の港。今すぐ向かわなきゃなんない」

 

佐助「堺……大阪か。京からそう遠くないな。こはるさん、君は安全な京の宿で待機して欲しい。俺が戻り次第、すぐワームホールが現れる本能寺へ向かおう」

 

(離れるのは、やっぱり不安だけど……)

 

「分かった、京で佐助くんが来るのを待ってる。絶対に帰ってきてね」

 

佐助「ああ、必ず」

…………

 

三人で京にたどり着くと、すぐに宿を一部屋取った。

ここでしばらく、佐助くんの帰りを待つことになる。

 

蘭丸「再会したばっかりだけど、お別れだね。すぐに発たないと」

 

(ひと息入れる暇もないのかな……)

 

「ふたりとも、気をつけて。表まで送るね」

 

蘭丸「ううん、それより……」

 

蘭丸くんがニッコリ笑って、佐助くんの肩を軽く叩く。

 

蘭丸「佐助殿、俺は外で待ってるね! 少しだけ時間をあげる」

 

佐助「……? どうして……」

 

蘭丸「んもう、鈍いんだからー。命がけの戦いになるから、ゆっくり別れを惜しみなよってこと! ふたりっきりでね」

 

「えっ?」

 

蘭丸くんはぐっと私に顔を寄せて、悪戯っぽく微笑んだ。

 

蘭丸「佐助殿は美香様の、大事な人なんでしょ? 俺、知ってるんだよ」

 

佐助「お気遣い痛みいる、蘭丸くん」

 

蘭丸「どーいたしまして! 佐助殿、いちゃいちゃしすぎて遅刻しないでね?」

 

佐助「努力はしてみる」

 

「ちょちょ、ちょっと……!」

 

(ふたりとも、急に何を言い出すの!?)

 

「佐助くん、そんなに落ち着いて返さないで欲しいんだけど……」

 

佐助「これでもかなり緊張してる。心拍数、確認する?」

 

「う、ううん、それは大丈夫……!」

 

蘭丸「ふふ、ふたりの会話って聞いてて飽きないなー。それじゃ、おっ先にー!」

 

笑顔の蘭丸くんは背を向けて、軽い足取りで部屋を出ていった。

 

(ふう、変な汗かいた……。あれ? そういえば……さっきはすっかり元の蘭丸くんに戻ってたな)

 

彼が負った傷は簡単には消えないけど、少しずつ元気になっている–––そう思ったら嬉しくなった。

 

佐助「美香さん」

 

佐助くんが私の手を握って、筋張った指が絡められた。

 

佐助「俺は、蘭丸くんの言葉に甘える気なんだけど、君は?」

 

澄んだ瞳に射抜かれて、いきなり鼓動が跳ね上がる。

 

(今この手を離したら、次に触れられるのは、嵐の夜かもしれない……)

 

素直な想いを伝えてくれる佐助くんの気持ちに応えたくて、大きな手を握り返した。

 

「……うん、私も……」

 

佐助「よかった、同意を得られて」

 

表情を崩さずに佐助くんが私の頭にキスを落とす。

 

(ん……っ)

 

背筋が甘く痺れ、びくりと肩が震える。

 

佐助「……どうかした?」

 

「ううん……。なんでもない」

 

(部屋にふたりきりなんて久しぶりだから、なんだか、恥ずかしい……)

 

差し込む日差しが、やたらと眩しい気がする。

佐助くんの唇や額や頬に触れるたびに、どくどくと心音が速くなるのを感じていると……

 

佐助「ん?」

 

佐助くんが私の顎をすくって眉根を寄せた。

 

「……どうかした?」

 

佐助「顔がかなり火照ってるな。若干発汗の症状を見られるし、もしかしてこの部屋、暑過ぎた?」

 

「え……?」

 

佐助「明るい南向きの部屋を頼んだのは失敗か。変えてもらえないか宿の主人に交渉してくる」

 

(なんでそうなるの……っ!?)

 

「待って佐助くん!」

 

襖に手をかけた佐助くんを、慌てて引き止める。

 

「私の顔が赤いことと、この部屋の温度は関係ないよ」

 

佐助「だとすると……まさか体調不良? すまない、気づかなかった」

 

(もう……!)

 

「私が赤くなったのは、佐助くんが触れたからだよ」

 

佐助「え……? 今までも何度か触れても、これほどは……」

 

「これまでに、ええっっと……色々あった時は、夜だったから見えなかっただけで……私はずっと佐助くんに、ドキドキしてたよ。今は昼で明るし、だから余計に……」

 

佐助「…………」

 

(何を真面目に説明してるんだろう、私……っ)

 

佐助「なるほど、納得した。……時間がない。もっと君に触れさせて」

 

「え? ん……っ」

 

唇がそっと重なり、しなやかな腕が私の背中を抱きこんだ。

絡まる舌先に呼吸も忘れて、唇を深く合わせる。

 

「ん、……ふぁ…っ」

 

(キスだけなのに……くらくらする。佐助くんに触れられるのが、こんなにも嬉しい……)

 

わずかに顔が離れ、佐助くんが私を見下ろした。

 

佐助「ひとつだけ、約束して欲しい」

 

「何……?」

 

佐助「もし俺が戻ってこなかった時は、君だけで本能寺へ向かって。ワームホールに俺が間に合わなくても、決して待たないで。いい?」

 

(……私だけ現代へ帰れってこと?) 

 

一瞬で血の気が引いて、目を見開く。

 

「そんなこと……!」

 

できないと言いかけた私の口を、佐助くんの指先が覆った。

 

佐助「あくまで万が一の話だ。心配しないで」

 

向けられる眼差しは真剣で、佐助くんが本気だと痛いほど伝わってくる。

 

(『わかった』って答えたら、きっと安心する……。佐助くんはそういう人だ。これまでもずっと、私の身の安全を最優先にしてくれた。今から佐助くんが危険な場所へ向かうのは分かってる。でも……無理だ)

 

たまらず俯くと、背中に回された腕に力がこもった。

 

佐助「ごめん、不安にさせて」

 

(謝るのは私の方だ……)

 

『分かった』と答えて、佐助くんを安心させたいのに、どうしてもできない。

 

(帰れない。佐助くんのいない世界には)

 

答える代わりに、佐助くんの唇を自分から塞いだ。

 

佐助「……! …………っ」

 

私の頬に手を添え、重なった唇から熱い舌がゆっくりと入りこんだ。

 

「ん、っ……」

 

心音がうるさいくらいに騒ぐ中、優しい愛撫を繰り返される。

 

「ぁっ……」

 

佐助「その声、もっと聞きたい」

 

唇が首筋を伝い降り、胸元にキスが落とされ、身体の奥が一層熱くなった。

 

(こんな甘ったるい声……自分が自分じゃないみたいだ。もっと触れて欲しい。もっと佐助くんの体温を覚えていたい)

 

どうしようもなく甘く胸が疼く–––

それと同じだけ、佐助くんとの別れが目の前に迫り、不安が私の胸に重く沈んでいく。

 

(お願い……必ず戻ってきて。佐助くんと一緒にいられない人生なんて、もう考えられない)