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イケメンシリーズ ストーリーのネタバレです

戦国【佐助】共通4話前半

佐助くんが織田軍の敵方に仕える人だという確信が深まる中–––

 

私は佐助くんが武将公認で安土城を訪ねてきても、仕事が忙しいことを理由に、一緒に過ごさなくなった。

 

(私を助けるために佐助くんが危険な橋を渡ったりしないよう、早く自立しないと)

 

そんな想いから、最近は針子の仕事だけじゃなく、城の雑事を前よりいっそう手伝うようにしていた。

 

女中「美香様、廊下の掃除はもう十分ですから少し休憩してください」

 

「いえ、まだ疲れてないので、ほかにお仕事があればやらせてください!」

 

女中「そう言って、ずっと働き通しじゃないですか。お願いすることがあればまた声をおかけしますから」

 

(それじゃ部屋に戻って、頼まれた着物を仕上げよう。今は少しでも手を動かしていたい)

 

女中さんにお礼を言って、自分の部屋に向かっていると……

 

佐助「こんにちは、美香さん」

 

「佐助くん……っ」

 

声をかけられて、びくりと肩が揺れた。

 

佐助「草餅を買ってきたんだけど、一緒にどうかな」

 

「草餅?」

 

佐助「幸おすすめの茶屋で買ってきた。あんこがみっちり入ってて、極上の味だそうだ」

 

「みっちり……!」

 

(佐助くんと一緒に食べたら美味しいだろうな……。でも……)

 

気にかけてもらえて嬉しい気持ちを隠し、首を横に振る。

 

「今日もちょっとこのあと予定が詰まってて……。佐助くん、ごめん、またね!」

 

佐助「あっ、美香さん……」

 

背中を向けて急いでその場を離れ、廊下を曲がり身を隠す。

 

(本当にごめん! 私も佐助くんとゆっくり過ごしたいけど……)

 

ーーーーーーーー

光秀「では、単刀直入に聞こう。お前の友人は、一体どこの手の者だ?」

ーーーーーーーー

 

甘さの一切ない光秀さんの眼差しがよみがえり、背筋が震えた。

壁に隠れながら、草餅の包みを手に立ちすくむ佐助くんをそっと見つめる。

 

(今は立ち話をするだけでも、元気がもらえるから十分だ)

…………


佐助「美香さん……」

 

立ち去った美香と入れ替わるように、家康と三成が佐助の前に現れた。

 

三成「佐助殿、こんにちは」

 

佐助「あ……お邪魔してます、三成さん」

 

家康「あの子に愛想つかされたみたいだね、庭師見習い」

 

佐助「家康さん……慰めてくれますか」

 

家康「冗談でしょ。あんな単純な子に避けられるなんて自業自得だよ。どうせ美香に変なちょっかいかけたんじゃないの」

 

佐助「変なちょっかい、か……」

 

何かを思い出したように、佐助がポンと手のひらに拳をのせる。

 

佐助「そういえばこの前、声真似をしました」

 

家康「それ……気に食わない奴にやられたら、俺なら末代まで呪うね」

 

佐助「っ、幕末まで呪われ続けるってことか……」

 

ひとり言をこぼす佐助に、三成はにっこりと微笑んだ。

 

三成「佐助殿、きっと美香様はお忙しかっただけですよ」

 

佐助「そうでしょうか、三成さん」

 

家康「忠告しとくけど、佐助、俺がどんなに避けて避けて避けまくっても気づかない鈍感男の助言なんて、聞く耳持たないほうがいいよ」

 

三成「家康様に避けられている方がいらっしゃるんですか? 不憫ですね……」

 

心底同情するような声を返され、家康の眼差しに呆れがにじむ。

 

家康「不憫なのはこっちだよ……。はぁ」

 

三成「家康様、何か悲しいことでも……? 私で良ければお話を伺います」

 

佐助「ドンマイですよ、家康さん」

 

家康「なんで俺が慰められなきゃならないんだよ……っ。それに『丼舞い』って何!」

 

気を利かせたつもりの佐助の声援に、家康はきつく眉をひそめるだけだった。

…………


(家康と三成くん、佐助くんと何話してるんだろう……)

 

廊下の角からひそかに三人をうかがうけれど、声までは聞こえない。

 

(いいなあ、楽しそう……。私も、佐助くんと話したい)

 

今すぐそばへ行きたい気持ちを、グッとこらえる。

 

(こんなに甘えた気持ちのままじゃダメだ。ひとりで戦国ライフを乗り切れるようになるまでは、佐助くん断ちだ……!)

…………

その日の夕方–––

 

家康「ねえ、ちょっと」

 

三成「美香様、少しよろしいでしょうか」

 

(家康と三成くん……?)

 

広間へ花を飾りに行く途中、ふたりに声をかけられた。

 

「うん、どうかした?」

 

家康「面倒だから前置きなしで聞くけど、佐助と何かあった?」

 

「え……!」

 

家康「昼にあんた、佐助のこと袖にしてたでしょ」

 

(あれ、見られてたんだ……)

 

三成くんは心配そうに表情を曇らせる。

 

三成「家康様と一緒に、佐助殿に草餅をごちそうになったのですが、本当は美香様と召し上がるつもりだったと佐助殿は仰っていて……おふたりの間に何かあったのではないかと、心配になりました」

 

(っ、三成くん、鋭い……)

 

家康「俺までめんどくさい面子の茶会に巻き込まれた。あんたのせいで。どうしてあいつを避けてるの」

 

「避けてるわけじゃ、ないけど……」

 

(敵方の佐助くんを危険な目に合わせたくないから……なんて、とても言えない)

 

「とにかく何もないよ。心配させてごめんね」

 

強がって笑う私に、家康と三成くんは察したように顔を見合わせる。

 

三成「分かりました。これ以上はお聞きしませんが、苦しくなったときは私たちを頼ってくださいね」

 

家康「俺は頼られたくなんてないけど、あんたが暇なら今度、俺の御殿に来れば。ワサビ撫でさせてあげる」

 

(ワサビを撫でる……っ? 乱世ではそんな刺激的な遊びが流行ってるんだ。ふたりとも……態度は真逆だけど、心配してくれてるんだ)

 

「ふたりとも、ありが……」

 

蘭丸「美香様ー! 何の話? 俺も混ぜてほしいな」

 

政宗「美香、家康と三成をはべらせてたのか」

 

「蘭丸くん、政宗……! あの、私、はべらせてなんか……」

 

蘭丸「美香様、はべらせるなら、俺にして?」

 

政宗「だったら俺も参戦する」

 

(わ、ふたりとも、近い……っ)

 

蘭丸「かっわいーい、美香様、顔が真っ赤だよ!」

 

熱くなった私の頬を蘭丸くんがちょんと突っついた。

 

三成「美香様、大丈夫ですか? もしや熱があるのでは……」

 

家康「とか言いながら、お前まで美香に顔を近づけるのやめなよ」

 

政宗「そういうお前こそ、美香に近づきたいんじゃないのか、家康?」

 

家康「は……っ?」

 

蘭丸「よーし、みんなでくっつきあいっこしよっ!」

 

「わわ!?」

 

家康「ちょ……っ、押すなよ蘭丸……!」

 

三成「ふふ、おしくらまんじゅうですね」

 

(どうしてこうなったの……っ?)

 

慌てる私の頭に、政宗が手のひらをポンっと乗せた。

 

政宗「何があったか知らないが、気分が乗らない時は馬鹿騒ぎするに限る」

 

政宗……)

 

みんなから向けられる笑顔が優しくて、なんだか胸の奥がむずむずとくすぐったくなる。

 

「……うん、ありがとう」

 

張り詰めていた気持ちが、少しだけほぐれていった。

…………

翌日–––

 

(あ、帰ってきた!)

 

秀吉「美香? そんなところで何してる」

 

馬からひらりと降りた秀吉さんのそばへ、急いで駆け寄る。

 

「おかえりなさい、秀吉さん。お願いがあって待ってたの」

 

秀吉「それはいいけど……こんな場所にひとりでいたら危ないだろ。何かあったらどうする気だ」

 

「え、でもお城のそばだよ。それにまだ明るいし」

 

秀吉「いーから言い訳するな。悪い奴には明るいも暗いも関係ない。俺に用があるなら、文で俺を呼び出して部屋で待て。わかったな?」

 

(秀吉さん、なんだか心配性のお兄ちゃんみたいだな)

 

「わかった、次から気をつけます」

 

素直に頭を下げて謝ると、秀吉さんが柔らかく笑う。

 

秀吉「ん。それで俺に何のお願いだ?」

 

「実は……今よりもっと、お仕事を任せてもらえないかと思って」

 

秀吉「は?」

 

(一日でも早く成長して、佐助くんに頼らずに乱世で暮らせるようにならなきゃ)

 

そのために、少しでもいろんな仕事にチャレンジして、戦国時代の暮らしに慣れたかった。

 

秀吉「お前には今も、お針子のほかに世話役の雑務をあれこれ任せてる。無理する必要ないだろ」

 

「それじゃ足りないの……!」

 

焦りで声が大きくなると、秀吉さんの後ろから馬のひづめの音が近づき–––

 

信長「秀吉、美香の好きにさせておけ」

 

秀吉「信長様……」

 

(信長様もご一緒だったんだ)

 

信長様は愉しげに口の端を上げて、馬上から私を見下ろす。

 

信長「貴様に新たな仕事を与えればいいのだな?」

 

「はい、お願いします」

 

信長「であれば今宵、酌でもしろ」

 

「酌、ですか……?」

 

眼光鋭い冷めた瞳に真っ直ぐ見据えられ、緊張が走る。

 

(信長様のことは前ほど怖くないけど、それでも……やっぱりこのド迫力! 緊張する……でも、この時代に慣れるように頑張るって、もう決めた)

 

自分に言い聞かせて、ゆっくりと頷いた。

 

「分かりました、お酌をさせていただきます」

 

信長「自ら仕事を増やせと申し出たからには、せいぜい俺を愉しませろ」

 

「はい……!」

 

(天下の織田信長と一対一でお酒を飲む……。要は、重役接待みたいなものだ。この難関をクリアすれば、戦国時代の人間として、一気にレベルアップできるかも!)

…………


美香と信長、秀吉たちの様子を、城に仕える女たちが微笑ましく見守っていた。

 

女中1「ふふ、あの方といると武将の皆さまも楽しそうで、見ているこっちまで微笑ましくなるわねえ。遠方からいらした信長様ゆかりのお姫様だというのに、キリキリとよくお働きになるし……」

 

女中2「気立てのいい優しい方よね」

 

そんな中、ひとりの女中が、唇をきつく噛みこはるを睨む。

 

女中3「どうかしたの? おツタちゃん」

 

おツタ「……なんでもない」

 

おツタと呼ばれた女は青ざめた顔で首を振り、女中たちの輪を抜けた。

…………


俯いて去っていくおツタを、木の陰から光秀が密かに目を細めて見遣っていた。

 

光秀「明るすぎる光は、時に毒虫をも引き寄せるか……」

…………


(信長様の酌の相手、ちゃんとできるかな。今から話題を考えておかなきゃ)

 

話のネタを探しながら部屋で繕い物をしていると–––

おツタ「失礼します、美香様」

 

「……? はい、どうぞ」

 

(城の女中さんだ。たしか名前は……おツタさんだっけ)

 

おツタ「今夜の件で、信長様から伝言を預かってきました」

 

「伝言……?」

 

おツタ「安土の山の頂上に、青くて美しい花が咲いているのですが、それを信長様はたいそう気に入られているので、摘んで天守に飾っておくように、とのことです」

 

(あの方が、お花を……?)

 

戸惑っていると、花の咲く場所を記した地図と摘んでくる花の絵を渡された。

 

おツタ「これを見て探せとのご命令です。用意できない時は、命はないと思え、と仰っていましたよ」

 

「ええ……っ?」

 

(お花と私の命、同じ価値なの!? 信長様は怖い人だけど、そんなひどい命令をするのかな? あの方なりのブラックジョークかも……)

 

おツタ「……じゃ、私はこれで」

 

「は、はい。伝言ありがとうございました」

 

おツタさんが帰った後、困惑しながら地図に視線を落とす。

 

(ひとりで城を離れるのは不安だけど、信長様のご命令だし……とにかく、この山へ行ってみよう。本当はこんな時は、佐助くんのアドバイスが欲しいけど……この程度のお遣いをこなせないようじゃダメだ)

 

すぐに支度を整えた私は、急いで部屋を後にした。

…………


(初めていく場所だし、のんびりしていられない)

 

駆け足で城の外に向かっていると……

 

光秀「美香、足を止めろ。お前に話がある」

 

(光秀さん?)

 

薄い笑みを浮かべている姿を見た瞬間、脊髄反射で警戒心がマックスになる。

 

「っ、すみません、今、急いでいるので」

 

光秀「こちらも急用だ。悪いことは言わないから、話を聞いていけ」

 

(と言われても……)

 

先日の佐助くんの件で探りを入れられたことは記憶に新しい。

 

(前はなんとか乗り切ったけど、今の私は、佐助くんが敵方だって確信し始めてる)

 

今度はきっと、この人に何もかも見抜かれてしまう–––それだけは絶対に避けたい。

 

(こういう時どうすべきかは、佐助くんに教わった)

 

「お話はまた今度でお願いします……! それじゃ!」 

 

光秀「何……?」

 

(『三十六計逃げるに如かず』だ!)

…………


逃げるように走り去る美香を、光秀はぽかんとして見送った。

 

光秀「やれやれ、ずいぶん警戒されたものだな。俺の言葉には耳を貸さないとなると……いたしかたない」

…………

佐助「今日こそ、会えるかな……。……ん?」

 

美香に会うため城を訪ねた佐助を、光秀が門前で待ち構えていた。

 

光秀「美香なら、城にはいないぞ」

 

佐助「……そうですか、ご親切にありがとうございます。では、俺はこれで」

 

必要最小限の言葉だけ交わし立ち去ろうとする佐助を、思わせぶりな声が押し留めた。

 

光秀「あの娘が窮地にある……と言ったら、どうする? 佐助殿」

 

佐助「え……?」

…………


(昼間でも暗いな……。地図、読み取りにくくなってきた)

 

森へやってきて数時間経っても、目当ての花は見当たらない。

 

(早くしないと日が暮れて真っ暗になってしまう……。急がないと)

 

強い焦りが広がって、地図に目を落としながら小走りに真っ直ぐ進む。

進路を塞ぐ背の高い草を、無造作にかき分けた時–––

 

???「危ない!」

 

(え!?)

 

腕を掴まれハッとすると、足元から風が吹き上げ前髪が浮いた。

 

(っ……崖……?)

 

足元の崖の際には、青く可愛らしい花が咲き、風にそよいでいる。

 

(私、今、危うく転がり落ちるところだった……)

 

ゾッとした瞬間、ずっと聞きたかった声が耳元で聞こえた。

 

佐助「……ぎりぎりセーフだな」

 

「さ、佐助くん……!?」

 

顔を見た途端、張り詰めていた気持ちが解けてしまう。

 

「どうして……っ、今は佐助くん断ち中なのに」

 

佐助「避けられてるのは理解してる。それでも君を迎えに来た。君は罠にはめられたんだ、美香さん。来て、山を下りよう」

 

(罠……?)

 

「待って、私、信長様の命令であの花を……」

 

身を乗り出そうとすると、私の腕を掴む佐助くんの手に力がこもった。

 

佐助「あれには触れない方がいい」

 

(え……?)

…………

 

森を離れた後、佐助くんに連れていかれたのは、近くにある湖だった。

 

「あの花が、トリカブト!? 毒草で有名な……!?」

 

佐助「ああ。忍者は薬草としても取り扱うけど」

 

(あんなに可愛らしい花が毒草だなんて……)

 

身をこわばらせる私に、佐助くんが落ち着いた声で言葉を続けた。

 

佐助「光秀さんが知らせてくれたんだ。『武将たちに可愛かられ、信長様にまで目をかけられてる君が、妬みを買っている。どうやらおツタという女中が、妙なことを企んでいるらしい』って」

 

「え……っ」

 

佐助「君が渡されたこの地図……目的地は崖の先になってる。山道に慣れていない君なら、暗い森で足を踏み外しても不思議はない」

 

佐助くんの冷静な説明に、心臓が嫌な音を立てる。

 

「っ……私が、崖から落ちずに戻ってきたとしても……」

 

佐助「毒草を信長様の天主に飾ったとなれば、家臣たちが大騒ぎして、ただじゃ済まなかっただろう」

 

(私……命を落とすところだったんだ)

 

背筋を冷たい汗が流れ落ちていく。

 

佐助「光秀さんによると、おツタという人は、前々から信長様を慕うあまり、あの方に近づこうとする女性たちに、行き過ぎた意地悪をしていたらしい」

 

(そんな……)

 

「私……全然気づかなかった……。ちゃんとこの城でやっていかなきゃって……」

 

(ただ必死で……)

 

自分のふがいなさを思い知らされて、言葉にならない。

 

佐助「君が頑張ってたことは、よく知ってる。ただ、どんなにうまく立ち回れる人でも、権力の集まる場所の近くにいると、誰かの恨みを買わずにはいられないものだから」

 

(そっか……。武将は戦いに明け暮れてるだけじゃない、政治の中枢にいる人たちなんだ)

 

佐助「光秀さんが知らせてくれたおかげで助かった。おツタさんには暇を出して、国へ帰らせると言ってた。今回みたいなヤッカミがさらに生まれないように、内々にカタをつけるとも」

 

「光秀さんが……?」

 

佐助「ああ。美香さん、あの人に気に入られたみたいだな」

 

(そうなのかな……)

 

「そんな実感は全然ないけど……。今度会ったらお礼を言わなきゃ」

 

ようやく気持ちが落ち着いてきたのと同時に、深いため息がこぼれた。

 

「……私、こんな命令なんだかおかしいって思ったのに、焦ってひとりで空回りして……迷惑かけてごめん……」

 

佐助「ああ、本当だ。深く反省してほしい」

 

(う……)

 

わずかに顔をしかめた佐助くんの瞳が、私を真っ直ぐ射抜く。

 

佐助「わかったら、ひとりで無駄に悩まず、俺を呼ぶこと」

 

「っ、無駄って……

佐助「気を悪くしたなら言い直す。君ひとりで悩むのは非効率だ。頼ってくれた方が、俺も嬉しい」

 

(佐助くん……、少し、怒ってる。私のこと、本気で心配してくれてる……)

 

佐助「最近は戦国講座を開催できてなかったけど、学ぶべきことは武将の逸話以外にも山ほどある。この時代は、知識の有無が生死をわけることもあるんだ」

 

(知識の有無が、生死をわける……)

 

崖に咲いていた可愛らしい青い花を思い出しながら、その言葉の重みを噛みしめる。

 

佐助「間に合ってよかった」

 

「佐助くん……」

 

(ひとりで強がって、佐助くんから離れようとしたけど……私、やり方を間違えてた)

 

たとえ表情に出なくても、わかる。

私の大事な友だちは今、心の底から心配して、胸を痛めてくれている。

 

「本当にごめん。私、佐助くんに助けられてばっかりだね……」

 

申し訳ない気持ちでいっぱいになって、声を絞り出す。

すると、佐助くんは苦しげな眼差しを私に向けた。

 

佐助「もう、それ以上謝らないでほしい。……俺も、美香さんに謝らないとならないことがある」

 

(え?)