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イケメンシリーズ ストーリーのネタバレです

王宮【アラン】11話後半honey

アラン「プリンセスが選んだのが、俺だからだよ」

 

「……!」


(アラン……)


アランの発言に、宮廷官僚たちがどよめき始めた。

 

宮廷官僚1「クロフォードの双子の片割が選ばれたのか?」

 

宮廷官僚2「王室直属の騎士団長が……」

 

アラン「…………」


(こんなところで言ってしまって、大丈夫なのかな)


私はアランを見上げ、速まる鼓動を押さえるため胸の前で手を握る。

 

(あれ……)


しかし不思議と、先ほどまでの恐怖が薄まっていることに気づいた。

震えていたはずの指先に、微かに温度が戻っている。


(アランが、隣にいてくれるから…なのかな)


考えているうちに、宮廷官僚たちの声は大きくなっていく。

 

宮廷官僚「クロフォードを追い出せ……!」


「……っ」


(すごく怒ってる……このままいたら、アランが……)

 

私は思わず、アランの服の裾を指先で引いた。


「……っ」

 

アランが驚いたように目を瞬かせ、それからふっと目を細める。


一層ざわめきが大きくなり始めた、その時…。


レオ「アラン」


ざわめきを裂くように、レオの声が響いてくる。

その静かな声に、一瞬の静寂が訪れた。


レオ「お前は、騎士の座を捨てるのか?家を飛び出してまで、掴んだのに?」


(え……?)

 

アラン「…………」


見上げると、アランはレオを見ないまま前だけを向いていた。


(家を、飛び出したって……)


私はアランの両親が宮廷官僚だったこと、そしてレオも現状、宮廷官僚であることを思い出す。

 

(そっか……アランは騎士になるために家を出たんだ)

 

やがてアランが、ふっと笑みを浮かべて口を開いた。

 

アラン「捨てねえよ」


レオ「…………」

 

アランの発言に、レオが目を細める。

アランは前を向いたまま、部屋に響く声音で言った。

 

アラン「プリンセスのために、騎士として、王として、この国を守り戦うと誓った」

 

(アラン……)


アランの言葉に、私は思い出していく。


―――――――

 

「……アラン=クロフォード。ウィスタリアのため、一緒に戦ってくれますか?」

 

アラン「ああ……命をかけて」

 

―――――――

 

(あの時、言ってくれたことだ……)

 

やがてレオが面白そうに、言った。

 

レオ「騎士であり王にもなるってこと?欲張りだね……」


アラン「…………」

 

すると、宮廷官僚たちが再びざわめき始める。


宮廷官僚1「そんな戯言、信じられるか……」

 

宮廷官僚2「前例がない。やはり官僚の中から選ばれることが適切だろう」

 

宮廷官僚1「いや、今はシュタインとの関係を……」

 

一層大きくなるざわめきに、レオが大きく息をつく。

 

レオ「頭の堅い連中だよね」

 

ジル「……ええ」


ジルがレオの言葉に、そっと相槌を打っていた。

 

アラン「…………」

 

しばらくの間黙ったままだったアランが、ちらりと私を見下ろす。


「……アラン?」


(何を言ったら、この人たちにわかってもらえるんだろう……)

 

不安になっていた私は、アランを見上げ名前を呼んだ。


目が合うと、アランがふっと目を細める。


アラン「…………」

 

「……?」


そうして黙ったまま、軽い仕草で手招きをした。


(……どうしたんだろう)


手招きに応え、私が少しだけ顔を寄せると…。


アランの手が、突然頭の後ろにかかる。

 

「えっ」


驚き仰ぎ見ると、アランがそのまま顔を傾け唇を重ねた。

 

「……!」


アランのキスを受け止め、私は驚きに目を見開いた。

 

唇が離れると、そのままアランを見上げる。


アラン「…………」

 

するとアランが、黙ったまま目を細める。

 

(あ、アラン……どうして)

 

その瞬間、宮廷官僚たちでさえもが驚き口を閉ざす。

そんな中、レオの呟きだけが耳に聞こえてきた。


レオ「わー衝撃的」


ジル「…………」

 

すると静寂を裂き、アランが宮廷官僚たちに向かって宣言する。


アラン「こいつを俺から奪えるなら、奪ってみろよ」


アランの言葉が、余韻をもって部屋に響き渡っていった。


「…………」


その言葉に息を呑み、私は顔を上げる。

 

(アランが隣にいてくれるんだから、私も……)

 

そうしてゆっくりと前を向くと、口を開いた。


「私はウィスタリアのプリンセスとして、アランを選びました。ドレナ王国とのことも、アランや皆と共に最後まで戦い抜きます」


アランの視線が、私に降りてくるのがわかる。

そして、ジルやレオ、宮廷官僚たちの視線も…。

 

「それが、私のプリンセスとしての役目です……」

 

私の言葉が、辺りを満たしていく。


そうして今度こそ、宮廷官僚たちはその口を閉ざした…。

 

 

..........


そして、王室会議は終わり…―。

 

執務室に戻った私は、息をつく。

 

ジル「あの重鎮たちを黙らせたのは、あなたが初めてでしょうね」

 

(でも、ああいう風に言えたのはアランのおかげだな……)


私はジルを見上げ、尋ねた。


「……ジル、アランはどこにいるの?」


ジル「…………」

 

するとジルが、少し気まずそうに目を伏せる。


(え……?)


ジル「アラン殿は……」


そうして聞こえてきたジルの言葉に、私は思わず声を上げる。


「部屋に軟禁って……どうして……?」


ジル「いくら次期国王候補とはいえ、王室会議の扉を開く権限はありません」

 

私は、王室会議の重苦しい扉を思い出した。

 

ジル「それを破ったのですから、処分は免れないでしょう」

 

「そんな……」


(アランは、私を助けにきてくれたのに……)


すると声を和らげ、ジルが言う。


ジル「ですが、プリンセスが選びさえすれば、それは絶対ですから。しばらく会うことが出来なくなる程度の処分ですよ……」



..........


そして、その夜…―。

 

私はベッドに腰掛けながら、アランの言葉を思い出していた。

 

―――――――

 

アラン「プリンセスのために、騎士として、王として、この国を守り戦うと誓った。こいつを俺から奪えるなら、奪ってみろよ」

 

―――――――

 

顔を上げ、窓の外を見る。


(やっぱり今のうちに、アランに会ってお礼を言いたい。あの場所でプリンセスとして発言出来たのは、アランのおかげだから……)

 

私は立ち上がり、こっそりと部屋を出ていった。

 

..........


見張りの騎士に見つからないように、足音に気をつけながら、私はアランの部屋を目指していく。

 

「……!」


すると、微かな物音が聞こえてきた。

 

(見つかったら、アランに迷惑をかけちゃうかもしれない……)


私はその場をそっと逃げ出す。


しかし、物音は私の後を追いかけて来て……。


「……っ」

 

追いかけて来る物音まで逃げ、私は中庭まで出てきてしまっていた。


(どうしよう、もう足が……走れない)


長く駆けてきたせいで、足元がふらつく。

やがて足が止まると、私を追ってきた何かが飛びついてきた。


「きゃっ」


(……え?)


驚きながら、足元にくっつく何かを見下ろす。

 

「……アーサー!?」


暗闇に目が慣れると、アーサーの姿が目に入ってきた。

 

アラン「……お前、何してんの?」

 

「……!」


聞こえてきた声に顔を上げると、アーサーの後ろからアランが現れる。

 

「あ、アランこそ……どうしてここに」


(だって、アランは部屋に閉じ込められているって……)

 

するとアランが、ふっと口元を笑わせた。

 

アラン「抜け出すのなんて簡単だろ」


「…………」


(私は、こんなに苦労したのに……)

 

私はようやく息をつき、顔を上げる。


(でも、会えて良かった)

 

「あの……」


話しかけようと、私が声を上げた時…。


アラン「…………」


不意にアランが顔を上げ、城の方へと視線を送った。


アラン「……誰か来るな。見回りか」

 

「え……」


(こんなところ見られたら……どうしよう)

 

アラン「…………」

 

すると突然、アランが私の腕をとり歩き出す。


そうして噴水の影に隠れるようにしゃがみこんだ。


「…………」

 

アラン「…………」

 

足音が、だんだんと大きく響いてくる。

 

(見つかりませんように……!)

 

思いながら息をつくと、そんな私を見下ろしてアランが目を細めた。

やがて耳元に唇を寄せ、微かな声で囁く。


アラン「……黙ってろよ?」

 

「……?」


声に顔を上げると、アランがそのままキスを落とした。

 

「…っ……」

 

(あ、アラン……!?)