ikemenserieslのブログ

イケメンシリーズ ストーリーのネタバレです

100プリ【ゼノ】共通1話後半

 

???「ちゃんと捕まっていろ」

 

(この人は、.....誰?)

 

抱きかかえられたまま部屋の中に引き寄せられると、腕がすっと離された

 

「...ありがとうございます」

 

???「いや」

 

(この人が受け止めてくれなかったら、きっと怪我してたよね)

 

まだ静まらない胸を抑えて息をつくと、その人がすっと目を細める。

 

???「星が落ちてきたのかと思ったな」

 

「星が...?」

 

低い声が部屋に落ちていく。

 

???「今まで幾度となく空を見上げてきたが人が落ちてきたことは初めてだ」

 

「...っ...」

 

目を伏せると、窓のそばに追いかけていたスピーチ原稿が落ちていた。

それを拾い上げると......

 

???「これも、お前のものだろう」

 

「え?」

 

振り返るとその人の手の中には、いつの間にか脱げてしまっていた片方のガラスの靴があった。

 

???「...........」

 

優雅な仕草でその場にひざまずくと、足元にガラスの靴が差し出される。

息が止まるほどの独特の空気感に包まれて、ただ見つめることしかできない。

 

???「どうかしたのか」

 

「あ...いえ」

 

首を振ってそっと足の甲をガラスの靴に差し込んだ。

お礼を伝えようとしたその時.....

 

???「このガラスの靴はお前にとって大切なものか?」

 

不意に尋ねられた質問に驚く。

 

(どうして、そんなこと...でも)

 

目の前の人の目は真剣で、私は応えるように口を開く。

 

「はい、大切なものです」

「数日前にプリンセスに選ばれたばかりの私が立っていられるのは...このガラスの靴が背中を押してくれているからだと思っています」

 

足元のガラスの靴がどこか儚く光る。

 

「けど、いつか...」

 

???「..........」

 

「このガラスの靴に相応しいプリンセスになりたいんです」

 

???「そうか」

 

「あ...すみません、勝手に喋って」

 

???「いや」

 

その人は儚く微笑むと立ち上がった。

 

???「ガラスの靴は、人を見る目があるのかもしれないな」

 

「...え」

 

笑みだけを残し、その人は扉に手をかける。

 

(あ...)

 

「もう、行ってしまうんですか?」

 

???「...そのつもりだが」

 

(...今、聞いておかないと)

 

「あの...!」

 

???「どうした」

 

「名前を教えて頂けますか...?」

 

一息に告げると、その人は低い声で告げた。

 

???「また、すぐに会うことになる」

 

(...どういうこと)

 

何も言えず立ち尽くしていると、扉が開かれて風が流れ込んでくる。

 

???「...ではな」

 

低い声だけを残して、扉が閉まってしまう。

 

(...一体、あの人は誰なんだろう)

 

耳元には、まだ低い声が残っている。

胸はずっと高鳴ったままで、思わず胸をぎゅっと押さえる。

 

(また、すぐに会えるのかな)

 

ゼノが暗い廊下を歩いていると、前から低い足音が響く。

 

アルバート「なんだか物音がしましたが、何かありましたか?」

 

ゼノ「いや。少し、強い風が吹いただけだ」

 

アルバート「そうですか。それならよいのですが」

 

アルバートは眼鏡のつるをくいっと上げると、ため息をつく。

 

アルバート「それにしても、本当にウィスタリアは騒がしい国ですね。ここまで声が聞こえてきますよ」

 

遠くのダンスホールから、人の声が微かに聞こえてくる。

 

アルバート「第一、プリンセスのお披露目パーティーなどゼノ様がわざわざ足を運ばずとも...」

 

???「アルはあいかわらずうるさいなあ」

 

廊下に響く明るい声に、アルバートが視線を向けると......

 

ユーリ「久しぶり、アル」

 

アルバート「.....っ...」

 

ゼノ「..........」

 

すっと視線を絡ませると、ユーリは丁寧な仕草でゼノに頭を下げて呟いた。

 

ユーリ「お久しぶりです。ゼノ様」

 

ユーリがゆっくり顔を上げると、ゼノは目を細めた。

 

ゼノ「...ああ、久しぶりだな」

 

アルバート「貴様!どの顔を下げてゼノ様の前に...っ」

 

アルバートが詰め寄ると、ユーリは顔色一つ変えることなく言う。

 

ユーリ「アル、俺はゼノ様への忠誠を忘れたことはないよ。...たたま、俺は俺の意思でここにいるんだ」

 

はっきりとした言葉にアルバートが眉を寄せると、ユーリは親指でアルバートの眉間の皺をぐりぐりと押す。

 

アルバート「な...!」

 

ユーリ「ここ、癖になるよ?ってことで、俺は執事としての仕事があるんで。

 

ユーリ「失礼します。ゼノ様。それじゃあね、アル」

 

アルバート「待て...!」

 

ゼノ「アル、やめろ」

 

ゼノの低い声にアルバートは動きを止める。

 

アルバート「いいのですか、あやつを野放しにしても」

 

ゼノ「考え無しに行動をする者ではない。それは、お前が1番わかってるのではないか」

 

アルバートは遠くなるユーリの背中を見つめ、また眉を深く寄せた。

 

...........

 

(うわ......すごい人)

 

目が眩むほどのシャンデリアに照らされて階段を降りて行くと、そこにはたくさんの人がいた。

 

ジル「プリンセス、こちらにいらしてください」

 

たくさんの人の中、ジルの元へ歩いて行くとスーツを着た人が頭を下げる。

 

男性「今夜はお招きいただきありがとうございます」

 

「はい、初めてお目にかかります。お会いできて光栄です」

 

男性「素敵なプリンセスですね、ジル様」

 

ジル「「ありがとうございます」

 

男性は笑みを浮かべると、また会釈をして立ち去って行く。

 

「ジル、ちゃんと挨拶できてた?」

 

ジル「ええ、最初にしては上出来ですよ」

 

(...よかった)

 

ほっと胸を撫で下ろしたその時...

 

ジル「プリンセス」

 

「ジル...?」

 

ジルが遠くに視線を向けて、目を細める。

 

ジル「今からこちらに挨拶に来てくださる方はシュタインの国王陛下です」

 

(...シュタインの、国王陛下)

 

ーーーーーーーー

「...ゼノ=ジェラルド」

 

ユーリ「この方が国王陛下」

ユーリ「数年前に即位して、一代でウィスタリアと交易を結んで国を急激に成長させた人」

 

「なんだかすごい人なんだね」

 

「...そう、すごい人なんだ」

ーーーーーーーー

 

ユーリの言葉をそっと思い出していると、ジルがそっと耳に唇を寄せて囁く。

 

ジル「くれぐれもそそのないようにしてください」

 

「うん...」

 

しだいに近づいて来るあしおとに、一瞬だけドレスの裾を握りしめた。

 

(隣国シュタインの国王陛下...どんな方なんだろう)

 

目の前で、足が止まり、濃い影がおちる。

視線を上げて口を開きかけたその瞬間......

目の前の姿に息を呑んだ...ーーー

 

(......嘘)