ikemenserieslのブログ

イケメンシリーズ ストーリーのネタバレです

100プリ【ゼノ】3話 前半

 

目の前に並んだ豪華な料理に、思わず息を呑む。

 

アルバート「どうかされましたか?」

 

「あ、いえ。あまりに豪華な料理なので驚いてしまって」

 

アルバート「...国賓で招いているのに、充分なもてないしができていない   せめて、食事くらい喜んで頂きたいとゼノ様が」

 

(...そんな風に考えてくださってたんだ)

 

「けど、この量は一人じゃ食べきれません。アランも今はいないですし」

 

(そうだ!)

 

アルバートさん、一緒に食べてくれませんか?」

 

アルバート「どうして私が...っ...騎士として反します」

 

「けれと、このままだとせっかく作ってくださった食事が勿体ないです」

 

アルバート「...そんな目で見ないでください」

 

少しの間の後、ため息が聞こえて隣で椅子が引かれる。

 

アルバート「...今夜だけですよ」

 

「はい、ありがとうございます。アルバートさん」

 

ナイフとフォークを手に取り、並んで食事を進めていく。

 

「そう言えば、昼間アランと剣を交えている姿を見ました」

 

アルバート「あなたが見ても何も面白くないでしょう」

 

「いえ、面白かったです。それに、アルバートさんの気持ちを知ることができましたから」

 

アルバート「それは...」

 

「ゼノ様を支えたいと強く想う気持ちです」

 

「...なっ!」

 

椅子をガタンと鳴らすと、アルバートさんは息をついた。

その姿がなんだか微笑ましくて笑みをこぼした瞬間、ひどく落ち着いた声が聞こえてきた。

 

アルバート「シュタインがまだ閉鎖的だった、幼い頃からずっとおそばにいましたから  支えたいと思う気持ちは必然でしょう」

 

(ゼノ様が即位してから国が開けたと言っていたけど...)

 

「どうして、シュタインは他の国との交流を断っていたんですか?」

 

アルバートさんが一瞬だけ目を伏せる。

 

アルバート「ここで濁しても、結局調べてばわかってしまうことですね   ...全ては前・国王に起因しています」

 

「前・国王ということは...」

 

アルバート「ゼノ様のお父上です」

 

手にしていたフォークをそっと置くと、アルバートさんの声が静かに響いていく。

 

アルバート「前・国王は常に国民には笑顔をふりまいていました   ですが、蓋を開ければ国を閉ざし、全て自分の世界に閉じ込める...そんな方だった」

 

「自分の世界...?」

 

アルバート「ええ、ご子息のゼノ様でさえその対象でした」

 

「............」

 

アルバート「庭園の離れにある塔..  星しか見えないような場所に、閉じ込められていましたから」

 

胸が大きく鳴って、言葉が上手く出てこない。

 

(...本当の家族なのに)

 

アルバート「それからはあなたも知っている通りです    ...前・国王が逝去されてから、ゼノ様は荒廃したこの国を立て直した」

 

「はい...」

 

アルバート「その姿をおそばで見てきました。そして思ったんです   私は一生涯、この身をゼノ様に捧げようと」

 

静かな沈黙が落ちると、アルバートさんはわざとらしく咳をする。

 

アルバート「少し、話しすぎましたね  何をしているんです?料理が冷めてしまいますよ」

 

「あ...はい」

 

その後、淡々と食事の手を進めるアルバートさんの横顔を見つめて、私は机の下で一度だけ手をぎゅっと握りしめた。

 

 

...........

 

__...食事を終えて、庭園に出ると、優しい夜風が髪をさらっていく

 

アルバートさんから色んな話を聞いていたからかな   なんだか、気持ちが上手く整理できない)

 

ゆっくり庭園を歩きながら、大きく息を吸う。

さっきより少しだけ強い風が吹いて、髪を押さえたその瞬間

 

(あ......)

 

ゼノ「..........」

 

そこにはシャツ姿でただ空を見上げている姿があった。

 

(ゼノ様...)

 

なんだか声をかけてはいけない気がして、その横顔を見つめているとふっと視線が重なる。

 

ゼノ「プリンセス」

 

「あ...」

 

ゼノ「どうかしたのか、こんな時間に」

 

「少し風にあたりたくなってしまって」

 

ゼノ「そうか」

 

ゼノ様が目を細める。

 

「ゼノ様は、星を眺めていたのですか...?」

 

ゼノ「ああ」

 

(そう言えば...)

 

 

ーーーーーーーー

 

???「星が落ちてきたのかと思ったな」

 

「星が...?」

 

???「今まで幾度となく空を見上げてきたが   人が落ちてきたことは初めてだ」

 

ーーーーーーーー

 

 

(最初にお逢いした時も星を見上げていたって)

 

「ゼノ様は、星がお好きなんですか?」

 

ゼノ「考えたこともないな」

 

「え?」

 

静かな夜に、低い声だけが響いていく。

 

ゼノ「星は常に目の前にあるものだ   それ以上でも以下でもない」

 

「...そう、ですか」

 

(なんだか...少しだけ寂しい言葉だな)

 

その時、遠くに静かに建つ建物が見えた。

 

(あれって......)

 

 

ーーーーーーーー

 

アルバート「庭園の離れにある塔...   星しか見えないような場所に、閉じ込められていましたから」

 

ーーーーーーーー

 

 

きづかれないように、そっと横顔を見つめると、その瞳にはただ暗い夜空だけが映っている。

 

(ゼノ様にとって、星空を見上げることは   ただ上を見ること、それ以外の意味を持たないのかもしれない)

 

なんだか、それは常に上を見上げて生きていくゼノ様の生き方そのものに思えた。

 

ゼノ「お前は、どうして星を見上げる?」

 

不意に声が聞こえてきて、視線を向けられる。

 

「...?」

 

ゼノ「答えに釈然としない表情をしていたからな   お前の考えを聞きたいと思った」

 

(私が星を見上げる理由...__)

 

ぐっと視線を上げると......

視界を数えきれない星空が埋めつくしていく。

 

「理由はたくさんあります   ただ星を綺麗だと思ったり、流れ星に願いをかけたり。だけど一番は...   落ち込んだ時に、星を見上げたいと思います」

 

ゼノ「...それは」

 

「下を向いているよりもなんだか上を向いていた方が、落ち込んだ気分が和らぐ気がするんです」

 

星を見上げながら言うと、ゼノ様が微かに笑う気配がした。

 

(え......今)

 

視線を戻すと......

 

ゼノ「そんなことを考えたことはなかったな」

 

(あ...)

 

夜の中、微かに微笑むゼノ様の表情に胸の端が掴まれた。

 

(名前を知らない頃に逢った時の笑顔...)

 

笑顔に魅せられてるいると夜風が吹いてわスカートを揺らしていく。

 

(...まだ、ゼノ様の心がわからない)

 

肩が触れそうなほどの距離にいても、

きっと心の距離は地上と星くらい離れているような気がしてしまう。

 

(それでも私は...)

 

ゼノ「プリンセス...   明日は城下を案内しよう」

 

「はい」

 

ゼノ様がそれだけ告げて、夜の中を歩き出す。

その背中を追いかけながやスカートをぎゅっと握りしめた...__

 

(手を伸ばしたいと思い初めてるんだ)