ikemenserieslのブログ

イケメンシリーズ ストーリーのネタバレです

100プリ【ゼノ】2話後半

 

__...お披露目パーティーがおわり

 

プリンセス終了まで、あと91日。

 

 

クロード「美香、右腕を上げて」

 

「うん」

 

クロード「おい、それは左手だ    お前の好きな色を刺繍に使おうか、何色が好きだ?」

 

「...うん、そうだね」

 

ぼんやり答えると、髪をわしゃわしゃと撫でられる。

 

「...っ...クロード!」

 

クロード「やっとこっち見たな」

 

「あ...ごめん」

 

クロード「ドレスを作ってて、上の空になられたことは初めてだ」

 

クロードは笑うと、手にしたメジャーを机に置いてスケッチブックを手に取る。

さっと引かれた椅子に座ると、思わずため息がこぼれた。

 

(最近、ふとした時にどうして考えちゃうんだろ)

 

ゼノ「ではな、ウィスタリアのプリンセス」

 

もう数日前のことなに、まだゼノ様の面影は鮮明に思い出すことができた。

 

クロード「なにか悩みがあるのか?    ...って、聞きたいところだが、悩みと言ったら恋煩いって相場が決まってる」

 

「...恋煩いって」

 

クロード「ほらな、俺の目に狂いはない」

 

クロードは可笑しそうに肩を揺らす。

 

(もう......)

 

だけどクロードを前にすると、自然に気持ちが口からこぼれていく。

 

「ねえ、クロード    1度しか会ったことがないのに...  

ずっとその人のことばかり考えるのっておかしいよね」

 

呟くと、いつに泣く真剣な声が聞こえた。

 

クロード「何がおかしいんだ?」 

 

「え...?」

 

クロード「一瞬の出会いが、自分の全てになることだってある     気持ちが動く瞬間に、時間なんて関係ないだろ」

 

「......クロード」

 

クロード「なあ、美香」

 

「ん...?」

 

クロード「お前はその誰かさんのことを知りたいと思うのか?」

 

(私は...__)

 

あの夜、見送った背中に触れたいと思う。

あの低い声を、もう一度聞いてみたいと強く思った。

 

「......うん、知りたい」

 

(私はゼノ様のことを)

 

「もっと知りたいよ」

 

クロードが柔らかく笑う声が聞こえてくる。

 

クロード「知りたいと思うことから、恋は始まるんだ

考えすぎて、頭でっかちになるなよ」

 

「ありがとう、クロード」 

 

クロード「いいえ、お姫様」

 

クロードは笑うと、そばに置いてあったブラックコーヒーに手を伸ばす。

 

クロード「自分の感情に蓋をすることほどもったいないのとはない     美香、俺はお前が笑ってる顔が見たいよ」

 

クロードの言葉に笑みをこぼしたその時......

 

 

 

ジル「クロード、私は貴方の困った顔が見たいのですが...?」

 

(この声......)

 

振り返ると、そこには腕を組んでクロードを見下ろすジルの姿があった。

 

クロード「今日も良い天気だな、ジル。それなのに、どうした?そんな怖い顔して」

 

ジル「先ほどまで、貴方に惚れたメイドから相談を受けていたのですよ」

 

クロード「それは俺のせいじゃない」

 

ジル「無駄に好意を持たせるようなことはかり言っているのはどこのどなたでしょう」

 

クロード「そんな男前がいるなら見てみたいものだな」

 

「ジル...クロード?」

 

呆れた表情のジルとは対照的に、クロードは何食わぬ顔でコーヒーを飲んでいる。

 

(ほんと、この二人って仲が良いのか悪いのかわからないな

でも、こんなジルの表情が見られるのはクロードの前だけかも)

 

「それでジル、何が用事があったんじゃないの?」

 

ジルは気を取り直したように姿勢を正すと、口を開いた。

 

ジル「ええ、貴女にお伝えしなければならないことがあります。」

 

(...伝えないといけないことってなんだろ)

 

 

ジルの後についていくと......

 

レオ「待ってたよ、美香ちゃん」

 

「レオ...!」

 

ジル「今からするはなしは、レオの方が分かりやすく説明してくれる   そう思ったので呼んだのですが...」

 

レオ「はいはい、美香ちゃんは俺の隣ね」

 

「わ...!」

 

レオは私の肩をそっと押すと、椅子に座らせて顔を覗き込む。

 

レオ「それじゃ、まず何から教えよっか...?」

 

ジル「...レオ、そんなに顔を近づけて何を教えるつもりですか」

 

レオ「冗談だよ、ジル」

 

ジル「本当に困った人ですね、ま...クロードよりはマシですが」

 

ジルはため息をつくと、私に一枚の白い封筒を差し出す。

 

ジル「プリンセス、これを貴女に」

 

「これ...」

 

白い封筒を開けて、そこに書いてある文字に思わず息を呑んだ。

 

ジル「正式に貴女をシュタインに招きたい   ゼノ様からの文書です」

 

 

(...シュタインに)

 

「だけど、どうして私がシュタインに?」

 

レオ「そこは、俺の出番だね」

 

レオは笑うと、手元に置いてあった眼鏡をかける。

 

レオ「数年前まで、シュタインは国外との交易を断つ閉鎖的な国だったんだ」

 

(...確か、ユーリが言ってたっけ)

 

 

ーーーーーーーー

 

ユーリ「同盟国で、交易を交わしてるんだ」

 

「......ゼノ=ジェラルド」

 

ユーリ「この方が国王陛下   数年前に即位して、一代でウィスタリアよと交易を結んで国を急激に成長させた人」

 

ーーーーーーーー

 

 

「ゼノ様が、即位してウィスタリアと交易を結んだんだよね?」

 

レオ「正解  得た収益を土地の再建、国内の事業にあてて衰退していた国を蘇らせたんだ」

 

「そんなことが一代で可能なの?」

 

ジル「それか、あの方の王としての資質でしょう」

 

(...王としての、資質)

 

レオ「美香ちゃんがプリンセスになつたのは...  ウィスタリアを他国にPRする目的もあるって覚えてる?」

 

「うん、最初にクロードが言ってたよね   うは、観光に重きを置いてるから...?」

 

レオ「そう、ウィスタリアは観光客も多くて開けた国だけど  まだシュタインは閉鎖された国だって印象が強いんだ」

 

「それじゃ...」

 

ジル「極端に言うと、貴女をきっかけによりウィスタリアとの交流を盛んにして...  シュタインを開けた国にしたい。そう、お考えなのでしょう」

 

 

(だけど......)

 

「それってこのお城を離れるってことでしょ?」

 

レオ「国費として招かれてるからね、立派な公務でじしょ」

 

ジル「ええ、交流を交わすことはお互いの国にとって有益なことですからね」

 

ジルはそこで言葉を切ると、私に向き直る。

 

ジル「プリンセス、貴女のご判断にお任せしますよ...?」

 

(私は...__)

 

手のひらをぎゅっと握りしめて、口を開いた。

 

「私、シュタインに行きます」

 

 

........

 

__そして数日後

 

シュタインに向かう日が訪れた......

 

 

アラン「...一週間の長期滞在だなんて聞いてないんだけど」

 

「私もさっきレオに聞いたばっかりだよ」

 

アラン「あいつ、ほんと肝心なとこ省きすぎ」

 

リムジンに揺られながら、アランは息をつく。

 

「ごめんね、アラン」

 

アラン「...?なんでお前が謝んだよ 確かに一週間は長いけど、ちゃんとそばにいてやるから」

 

「え...」

 

アラン「俺、お前のボディーガードだろ」

 

アランの言葉に思わず顔を綻ばせると......

 

アラン「見て」

 

「ん...?」

 

首を傾げると、アランが窓を開ける。

少しだけ冷たい風が髪をさらって、目の前に見慣れない景色が飛び込んできた。

 

(..........)

 

アラン「あれが、シュタイン城」